本日の徹子の部屋ゲストは根津甚八さん

2002年1月10日

黒柳「もうずいぶん芸歴長いですよね」

根津≪そうですね≫

「赤テントですか本当にテント赤かったですかね」

≪赤かったです≫

「赤テントにいらっしゃってからあなたも人生いろいろありますよね。今も5歳のお子さんがいらっしゃって」

≪はい。男の子です≫

「50歳近くになって子供を持つというのは」

≪男の子だから、同性だから意識するというのか≫

「前はお嬢さんでしたね」

≪女の子でしたね。もう24ですけど≫

「あなたが24の娘さんと歩いてらして誰が娘と思うでしょうね」

≪どうでしょうか≫

「それはびっくりすると思いますよ。さっきうかがったんですけどお母様が亡くなってその時にお嬢さんとよくお会いになったそうですけど」

≪あのNHKのテレビ小説を楽しみにしていて決まったとそれで放送が始まるよといって楽しみにしていたんですけど。でやはり母親だなって思ったのは”宣伝しなくちゃねえ”って一生懸命言って≫

「まあみんなに宣伝しなくちゃって」

≪で放送まではお医者さんからもたないだろうって言われてたんですよ。≫

「あらそう」

≪ところが2週目まで見て。90でした≫

「90」

≪ええ。大往生でした≫

「それにしてもお母様がいなくなったというのはさびしいことでしょう」

≪そうですね≫

「お母様も戦争とかいろいろな時代を生きてきて」

≪励ますつもりで病室で言ったのは”よく働いたね”ってきびしい親父についてこき使われたねって、そしたら怒りましてねそんなこと言うんじゃないって≫

「きっとお父様のこと好きだったんじゃない」

≪まあ俳優になるということも陰で応援してくれたのは母親でした。周りは全員反対でしたから。それで家を出て1人でくらすということになった時も誰も見送りに来てくれなくてでもその中でも見送ってくれたのも母1人でしたから≫

「理解者だったんですよねお母様が。」

≪みんなが反対しても1人だけが味方っていうか≫

「でもそれはあなたにとってはお幸せでしたよね」

≪そうですね≫

「たった1人でもそれがお母様だったて言うことがね。当時厳格なお家だとみんな反対するっていうお家もおおいですから」

≪ええ≫

「でも少しでもお母様がNHKのテレビ小説をご覧になれたのはよかったですね」

≪ええ、うれしかったですね≫

「なにか感想はおききになって」

≪なにか1回目をみたあとは僕は直接聞いてないんですけど”私にはよくわからない”って言ってたみたいで。意識ももう朦朧とし始めてましたから≫

「朝のテレビ小説ってずっと見てないと」

≪そうですね。でもいくつになっても母親なんだって失ってからもっと親孝行しとけばよかったなあって≫

「でもどんなにしてもそれはそう思うでしょ」

≪変わんないでしょうね≫

「お母様が亡くなったときはテロ事件が起こったりして大変な時でしたね」

≪僕はねパレスチナのキャンプに劇団時代にいったことがあるんですよ≫

「あら」

≪はいキャンプめぐりをしたんです。アラブ語で≫

「アラビア語で」

≪覚えて。パレスチナなまりで。彼らと一緒に1週間ぐらい生活をともにして≫

「どんな芝居を」

≪パレスチナの応援の話。パレスチナに帰ろうっていう≫

「向こうの人にもわかる話」

≪興奮してすごかったですよ。少年兵が興奮して舞台に上がってきて≫

「もう見境がつかなくなってきてるんですかねえ」

≪イスラエルの爆撃機が飛んでくるんですよね。それで危ないっていうんですよ。それである場所ではやめてくれって言うことになって僕が主題歌を歌うシーンがあるんですけども歌だけでも興奮してうれしがって。だからわかるんですよね≫

「そういうことがあったんですか。あなたも学生運動なんかもそのころでしょう」

≪無茶苦茶やってましたね。みんな行くわけですよね。一種の流行病みたいなもんで。でも俺は芝居をやっていたから俺はいいとでも見にくるだけでもいいからっていうんで見学にいったんですよ≫

「みんなが運動しているところを」

≪機動隊がいるところを。でも機動隊がきたら僕は石を投げていました≫

「そう」

≪それから芝居から離れてそういうことを≫

「お母様は心配でしたでしょう」

≪母にはそれは内緒でした。火炎瓶投げたりそんな事やっていたんですから≫

「そんなことを」

≪ある時雨の日に行くんですけどビール瓶を持っていくんですよね。落としちゃった学生がいて当然本人が火達磨になりますよね。学生は対処の仕方を知らないんですよ。学生は引いちゃうんですよ。で群衆の中に私服の警察官が紛れ込んでて毛布をその学生にバーとかけて火を消すんです≫

「助かったの」

≪ええ。その時に僕らは何をやっているんだろうなって一瞬思いましたけどねえ≫

「それを投げる時は想像とかしないでやってやろうというだけなんでしょうね」

≪先のビジョンがないんですよね≫

「あなたもいろんなことがあった時代ですね。あなたは独協大学」

≪そうです≫

「演劇部でもねえ」

≪振り返ってみると面白かったというか、初めてのことばっかしで≫

「肝が据わってきません」

≪そうですね≫

「あなたがデビューなさってすっとでてきたのはそういうことを体験してたからというのも」

≪そうですね≫

「だから冷静な感じで出ていらしたのも」

≪背景にそういう体験があったからでしょう≫

「去年の秋にお亡くなりになられたお母様ですけどどういうお母様でした」

≪そうですねひと言とで言うとやさしい、器用でよく働いていたこま鼠のような≫

「何人兄弟でした」

≪男4人でした≫

「男4人じゃたいへんですよね」

≪まあ周りに親戚とかいましたから母親は父の面倒に追われていたというか≫

「歯医者さまでいらしたから」

≪ええ≫

「これから寂しいでしょうねいいお母様でしたんですから」

タイトルとURLをコピーしました