2002年2月4日
黒柳「この前に来ていただいたときは学生さん。早稲田の3年生。あの時はまだ有名って言うかねえ~」
乙武≪そうですね本を出しましたって言うときだったのであれからテレビにも出さしていただきましたし、雑誌にも新聞にも取り上げてもらいましたしなんだか≫
「そうなんです”五体不満足”という本をお出しになりましてベストセラーになりまして何百万部?」
≪500万部ぐらい≫
「外国にも翻訳されて英語版、フランス、ドイツ、イタリア、韓国タイ、台湾ぐらいですか」≪はい≫
「そういう意味ではフランスへいらっしゃってフランスでもインタビューされてただあの本をお書きになってみんなとってもすばらしいことだって知ったんですけど書いたことは誤算じゃないかってテレビでおっしゃってましたよね。どういうことで」
≪やっぱりね僕のメッセージを伝えたいということではあるんですけど予想以上に多くの方に読んでもらってしまったために自分自身の立場とか環境が思わぬほうに持っていかれたためにさすがに戸惑ってしまったという部分がありましたね≫
「みんなはあの本から勇気を教えてもらったりしたんだけどあなた自身としては不便ではあるけど不幸ではないといつもおっしゃってる。みんなもいいと思ったんだけど以上にみんなが聞くことはフランスにいらっしゃっても結局聞くことは同じことの繰り返しなんですって」
≪そうですね”その生きるパワーはどこからくるんですか”とか”お母様がすばらしい”とか、”なぜそんな笑顔でいられるんですか”とか”今までで一番困ったことはなんですか”とかどの方も判を押したように同じことを聞くので日本でもそうですし他の国でもそうですし何百回と同じインタビューをしていただいたんでさすがにへきへきしましたね(笑顔で)≫
「毎回違う答えをしようとしてもあまりにも数が多いと疲れますし、結婚となると相手の方のとこまで押しかけられると」
≪大変でしたね自分自身はメディアに出ている立場なので覚悟はしていたんですが妻のほうは普通に学生生活を送っていて彼女の方にインタビューがいったり彼女の実家のほうにもいったりしたことがあったのであれは参りましたね≫
「あの本をお書きになった後なんですけどいっしょに歩いてらっしゃたら女子高校生があなたたちを取り囲んじゃったら彼女が後ろづさりしてみんながいなくなってみたら泣いてたんですって」
≪やっぱりねパートナーがいきなり注目される存在になったということで僕自身も戸惑いはありましたけど彼女自身も戸惑いがあったんでしょうね≫
「長くお付き合いされて学校のときの後輩?ですから長くお付き合いされてきたのにこれから先どうなっちゃうのだろうって。でご結婚なさったんですけどとても素敵な日に入籍なされたのね」
≪はい。ぼくらが入籍に選んだ日は新月といいましてよく満月というのは聞くと思うんですけど月がだんだん満ちていって満ちた常態を満月、でどんどん欠けていって見えなくなった状態を新月というんですけどだいたい30日に1日あって昔の人はこれから何か始めるときに月がだんだん満ちていくという意味でこの日に始めると上手くいくと信じてたみたいですね。でそのことを前に聞いていたので何とかこの日にと。たまたま彼女の大学の卒業式の日と重なったのでその日にしようかなっと≫
「まあいいわね。まあそれでご結婚されてこれもマスコミにとりあげられて大変だったと思うんですけどあなたの書かれた本を読んだら奥様という方は”別に”ってあっさりした人だって」
≪そうですね≫
「そこがとっても良かったんですって。”ふ~ん別にいいよ”って」
≪そうですね僕の仕事になんかも口を出すほうでもないですし割と自分の世界をもっている人なんでお互いべったりというわけでもないですし良い関係が築けているのかなっと≫
「仕事はしてらっしゃらないんですけどあなたの仕事が上手くいくようにバックアップしてらっしゃるそうなんですけど、いつも笑ってる僕なんだぞ・いつも元気な僕なんだぞっと思われることが五体不満足をお書きになった最大の誤算の1つだと」
≪そうですね書いたものをご覧になった方にはすごくいつも元気で明るい乙武君っていうイメージを持たれていると思うんですけど彼女の場合は僕が本を出す前から付き合いはありましたし僕の弱い部分やかっこ悪い部分をしってますしそういう部分では”素”をだせますし楽ですね。≫
「うちに帰るとほっとしますし楽ですね。あなたが弱音を吐くとメールなんかで”あなたが弱音を吐いてどうするんだ”ってくるんですって」
≪ホームページ宛によくそんなメールもいただくんですけどやはり自分も弱音を吐きたくなるときもありますし≫
「人から過大に評価されたようにお思いになるんですって、私たちはそんな風には思ってないんだけど自分はそんなに偉い人間ではありませんといってもみんながそう見てしまう。さっきスポーツライターとご紹介したけど今そういう仕事をされているのね」
≪あのNumberというスポーツの雑誌があるんですけど毎号連載を持たせていただいて僕自身がインタビューをして原稿を書いて≫
「この局でもそうですけどスポーツを見に行って」
≪行ったりします。レポートしたりとか≫
「インタビューなさる選手の方に。お父様が結婚なさってから2ヵ月後に」
≪亡くなりまして≫
「あなたにとっては本当に偉大なお父様だったんですってねえ」
≪本当に今の自分があるのは父の多大な影響があったおかげだと思いますし父の死っていうのはショックでしたね≫
「建築家だったんでしょ。お父様はお若かったでしょ何歳?」
≪ちょうど60になった翌週ぐらいでしたかね≫
「でもお父様の棺の中にあなたが一番上手く書けたと思うNumberの記事のページを開けて入れたんですって」
≪そうなんですよ不謹慎に聞こえたらあれなんですけど僕は父の死によってパワーを与えられたという思いがしてまして、悲しかったしショックもあったんですけどそのNumberを父の棺に入れたことによって当然向うでね時間もたっぷりあるでしょうから読んでくれると思うんですよね。だから恥ずかしい記事は書けないなって気持ちになって以前より一生懸命仕事するようになりました≫
「それは金城龍彦さんていう野球選手のことで”輝きだした原石”というタイトルをお付けになって私も野球のことはわからないんですけど彼もずいぶん大変な道のりで新人王と首位打者を獲得。そんなこと無いんですって」
≪史上初ですね≫
「ですから五体不満足をみましたっていう方よりNumberを読みましたって言う人にであうとうれしくなるんですって」
≪ちょうどこの前も電車に乗ってたら斜め前にサラリーマンの方がNumberを読んでらっしゃって向うも僕に気付いてあわてて僕のページを開いて読んでくれて降りようと思ったらよかったよって言う意味だと思うんですけど親指を上に突き出してくれてうれしかったですね≫
「でも大学を卒業されてこれから何をしようと思ってる時に自分でスポーツの道をお選びになったんでそれで評価をうけるんだったらいいとお思いなんでしょうね」
≪やっぱり自分自身には恐怖感というものがありまして今はこうね本出したことでメディアに取り上げていただいてるんだと思うんですけどねえ世間というかマスコミは飽きが早いですし冷徹なものだと思うんですねその時に五体不満足を出した乙武ですて言ってもだれも見向きもしなくなる日がくると思うんですねそういったときに自分は何をしているのかなと確固たる物を作っておきたいなっていうのがありましてスポーツライターとして五体不満足という肩書きが付かなくてもきちっと生活していけるようにという思いがありまして一生懸命やらせてもらってますね≫
「インタビューしても五体不満足の乙武さんということではなくてスポーツが好きで情熱をもってる乙武さんだからインタビューを受けるという風にみなさん思ってると思うんです。」
~CM~
「スーパーJチャンネルという番組でシドニーへいらっしゃってよかったですね」
≪いい試合ばっかりで選手の熱い戦いを間近でみれてよかったですね≫
「あなた自身もスポーツをおやりになって」
≪そうですね中学校のときにバスケットボールを≫
「こうこうではアメリカンフットボールのマネージャーをやってらしてスポーツは詳しいんだけど一番詳しいのはサッカーと野球」
≪その2つが今のメインですね≫
「でもあれですねアナウンサーじゃないのに言語明晰ですね。気を使ってらっしゃる」
≪そうですね学生4年生のときに夕方のニュース番組でお仕事させていただいたんですけどあまりにも口をあけてハキハキしゃべるものですから学芸会しゃべりといってバカにされてたんですけど≫
「口をあけないで何言っているかわからないよりはいいと思うですけどねえ」
≪以前聴覚障害の方からお手紙をいただきまして私たちは唇の動きで言葉を理解するのですごくわかりすいですとお手紙をいただきまして≫
~CM~
「本を出して誤算だったというひとつにお父様のお葬式の時にご家族の姿を望遠レンズで狙ってる。たまんない事だったんですって」
≪本当に結婚のときもそうだったんですけど僕だけならいいんですけど父をなくしたばかりで悲観にくれている母のね姿なんかを望遠で狙われたりしたもんであの時は悲しみを通り越して憤りを感じましたね。≫
「仕方が無いからあなたが出て行って記者会見を開くんで妻とか母にインタビューなんかは止めて欲しいといったらやめてくださったんですって」
≪そうですねでもそういうインタビューをする場であればきちんとした喪服で来るのが筋なのかなったって思ったら本当にみなさん普段どおりのラフな格好でいらっしゃるもので常識って無いのかなってちょっとがっかりしました≫
「普通そういうときはちゃんとした格好をしてくるものだと思いますけどねえ。でもお母様が寂しいでしょう」
≪僕も結婚で家を出てしまいましたし父もいなくなりましたしすごく今は寂しい思いをしているとはおもうんですけど≫
「そのお母様もあなたが有名になっても1度もテレビにおでになることはなくお母様はもし自分たちがテレビに出るようなことがあったらやっぱり世の中っていうのはそういいことばっかしじゃなくてあなたがいつか傷つくときもある」
≪そのときまで私たちまでマスコミにでていると帰ってくる場所がなくなるからということでかたくなにね講演依頼からテレビの出演依頼から多くの主演依頼を父母にいただいていたんですけど1つも受けずに≫
「あの本を読ませていただいたらお母様があなたを初めて見たときに”まあ可愛い”とおっしゃたことから始まってどんなお母様なんだろうってみんな思うと思うんだけどまあそういうお気持ちで。まあどうですかね奥様と歩いてらっしゃるとみなさんどうですか」
≪やっぱり気持ち的に楽ですね。結婚前はコソコソしてしまうとこがあったんですけど今は2人で歩いていてもそうみなさんの目が気になることもないですね。だいぶ楽にはなりましたね≫
「奥様としては急に有名になった旦那様が」
≪もう結婚して3年半近くなるのでだいぶ彼女のほうもなれてきましたし何とか今は2人で≫
「また。ありがとうございました」