2002年3月27日
黒柳「しばらくお目にかからなかったのに全然おかわりなくて」
斎藤≪そんなことないですよ。僕は以前は一病息災って言ってたんですよ今は数病息災ですもの≫
「でも86歳で現役のお医者様って少ないと思いますけど」
≪週に2日だけ。止めろって言われてるんだけども頼んでねやってます。≫
「お父様は斎藤茂吉という大変な歌人でお母様は斎藤輝子さんといって冒険家ですかね」
≪お袋の話はやめましょう(笑)≫
「でも89歳で旅行に行かれたっておっしゃったじゃないですか」
≪ステッキついてヨロヨロしてたけどね最後の飛行機旅行。温泉場の湯布院に≫
「”輝子様”っていつも呼んでたんだけどすごい可愛がってくださって世界の一番端のとこにいかれた時にすごい風がビュービュー吹くとこでとんでっちゃたらどこ行くか分からないからみんなに押さえてもらって下の方を見たっておっしゃってましたけど。」
≪でもねえ体ガタピシャなんですよ。(お母さんの輝子さんが長生きできたのは)気力と好奇心なんでしょうね≫
「お母様の好奇心もすごいと思うんですけど今日のゲストの斎藤茂太さんの好奇心もすごいと思うのはお父様とお母様が亡くなられた時に両方とも解剖をされたんですって」
≪はい。親父も解剖したの僕の意思で。ところがお弟子さんや親戚がみんな反対するんですよ。でもお袋の鶴の一声で決まったの「茂太がやりたければやりましょう」って。でお袋も解剖したの≫
「お母様を解剖するってどういうものなんですか?」
≪お袋が死んだ後紙が出てきて”私が死んだら解剖してちょうだい”って書いてあるの≫
「そうなんですか」
≪我々(医者)は解剖したくてしょうがないの臨床診断と本物と合えばうれしくてしょうがないんです≫
※臨床:病人のそばに行くこと。実際に病人を診察治療すること~小学館国語大辞典より~
「お母様が亡くなられたときはガンで」
≪はいガンです。ガンがなければもう10年ぐらいは生きたかもしれません≫
「ガンの種類がものすごく若いガンだったんですって」
≪(笑)後で(解剖の)報告が来たの若い人に多いガンだって。最後まで人騒がせなんですよお袋は(笑)≫
「すごいですねえ最後は国内旅行だったですけど若い頃は海外旅行にいかれて」
≪80になって南極に行ったでしょ。帰ってきたらエベレストに行くって。娘を付かせて行かせたの酸素ボンベ持たせて。でも全然使わないで帰ってきた≫
「でもシェルパーにおんぶされて「(斎藤輝子さんの物まねで)皆さんは高山病になられましたけど私はならなかったんでございますよ」って。でもお医者様ってお母様を解剖されるときは親と子という気持ちはないんですか?」
≪やっぱり結果が知りたいんですよ自分の診断が当たってるかどうかは解剖でわかるわけでしょ。大げさにいえば医学の進歩にもつながる。僕も死んだら解剖してくれるでしょう倅(せがれ)が≫
「息子さんが。昔病院があったところに大家族で住んでらっしゃる」
≪今ね13人で住んでます。集合住宅作って15人で引っ越したのそしたら2人居なくなっちゃった。嫁に行って≫
※斎藤さんと息子さん、お孫さんの13人で暮らしている
「お嬢様お嫁に行って。そこでルールがあって生ものが配達されてきたら最初に受け取った人が食べてもいい」
≪自然に出来ちゃったの我が家の憲法が≫
「大変ですよねお留守だったらどうしたらいいのってなりますよね。腐ちゃうから最初に受け取った人が食べてもいい。雨が降っても洗濯物を入れてあげようとは思わない」
≪嫁がいるでしょ。嫁って言うのはよその家から来たんじゃない。うちの女房は姑じゃない監視されてるような感じがするじゃない。雪が降ろうが雨が降ろうが知らん振り≫
「あちらはあちらですると。集合で暮らされていて息子さんが3人いらっしゃってお互いが訪問する時は電話しなくては相手を訪問してはいけない」
≪孫の小さいのがいきなり”おじいちゃま”って来るのはかまわないけど大人がいきなりやって来てはいけないって言ったの≫
「ちょっとお茶のみに来ないとかは」
≪こっちから呼ぶ分にはかまわないけどね≫
「若い人がいらっしゃいますからボーとしてらっしゃる間もないですよね」
≪毎日が勉強ですね≫
「今シニアプラン開発機構の会長と言うのもやってらっしゃるんですけどこれはどんなことを」
≪シニアっていうとねサラリーマンで言うと定年まじかの人をシニアでその方がね20年も30年も生きるでしょそれをどんな風に膨らしたらいいかっていうのを研究する団体なんですよ。いろんなことを研究しましたけどその中で4つだけ言いますと(1)友人が多い(2)前向きな姿勢(3)本業以外の趣味(4)何事も人のせいにしない。これを実行している方が晩年非常に明るいですよ≫
「そうなんですかみなさん晩年明るく過ごそうと思ったらまず長く付き合える友達を作る」
≪定年退職になると途端にお友達が減る方が多いの。だから現役時代のお友達を維持しろって言ってるんですけどね≫
「それから仕事以外の趣味を持っていることこれ大事ですよね」
≪仕事が趣味ではダメなんですよ。退職したら後何もないじゃないですか≫
「お金がかからないことでもたくさん趣味を持つことは出来ますよね。それから責任は人のせいにしないで生きていくと明るく晩年を過ごすことが出来ると。たしかにそうですよね孤独にもならないですしね。連れ合いがもし万が一のことがあってもやっていけるということですかね」
≪不幸をプラスに転換すればいいんですよ≫
黒柳「前向きに行かないとストレスがたまって大変なことになると。こんな時代ですからストレスがない方はいらっしゃらないと思うのですが英語でSTRESSを」
斎藤≪最初のSは”スポーツ”スポーツというと野球だとかテニスとか考えるけど歩くだけでもスポーツ、それから”T”はトラベル。旅行っていうのは人間の本能ですから。”R”はねえレクリエーション≫
「レクリエーションはどんなことが」
≪もう何でもいいんですよ。道の吸殻拾ったってレクリエーションですよ。その次の”E(eat)”はねえ食べる。≫
「老人になってくると食べることが楽しみじゃなくなってくるって」
≪自分の健康のためには必要じゃないですか。僕は嫌いなものでも食べてますよ。トマトが嫌いなんだけど真っ先に食べますよ≫
「まあ薬と思えばねえなんだって」
≪それから”S”・”S”はスリープ。もうひとつのSはスマイル。ところがねえストレス解消っていうじゃないですか僕は嫌い。ストレス軽減って言ってるのストレスが全然なくなったらダメ。適度なストレスが人間をしっかりさせる≫
「全部なくしちゃいけない軽減する。でも老人になると朝早く起きちゃうっていいますけどそれはどうしたら」
≪お昼寝はしない。お昼寝するとそれだけ睡眠時間が減るじゃないですか。夏の暑い日なんか横になりたくなるけどグーグー寝ちゃダメ≫
「周りの人が起こしたほうがいいですかね」
≪それはねえハハハハハハハ。僕もねえ朝早く目覚めるようになっちゃたんですよ≫
「86歳ですから。この頃早い人で60,70で朝5時ごろ起きちゃうっていう人いますから。年取ったら3時間でいいとかそういうことはないですか?」
≪それはありません。個人差が多いから≫
「なるべくなら一杯寝たほうがいい」
≪(うなずく)≫
「ストレスを減らしていくと老人性のボケるとかも少なくなりますか?」
≪必ず来るんですよ。でもそれを5年でも10年でも延ばすことは出来ますよ≫
黒柳「お酒ですけどアルコール健康医学協会の会長をされている。ずいぶんたくさんやってらっしゃるんですね」
斎藤≪健康って付いてるのはねえお酒を上手く飲むと健康に役立つということでついてるんです。ほどほどに飲みなさいと。それで人体実験の結果出したのが”2”です。日本酒だと2合まで≫
「2合も飲んでいいんですか」
≪若い人の話よ(会場笑)我々のように年取ったらもっと減らしてるの。そしてビールで中ビン2本。ダブルのウィスキーの水割り2杯≫
「みんな飲みすぎてますねえ。もっとみんな飲んでますでしょ」
≪それとワインはねえ排泄ちょっと遅いんですよ。1本を3人で飲むとちょうどいい。それと”2”という数字が続くけど週休2日制≫
「週に2日は飲まない。よく休肝日とかいって肝臓を休ませる日を作りますけど」
≪ところが毎日飲みたい方は1合でガマンすれば毎日飲んでよろしい≫
「それは正しい?」
≪正しい。僕は毎日1合以下。アルコール中毒になったら早死にしますから≫
「若い人でも壮年でも2日は休まなくてはいけない」
※壮年:働き盛りの年頃。元気盛んな年頃~小学館国語大辞典より~
≪それが理想的。それとすきっ腹に飲まない。お酒は食事とともにと言ってるんです。僕もねえ2口・・3口・・10口たべてからお酒を飲みます≫
「毎晩(のみますか)?」
≪毎晩≫
「でも休肝日作ってますか?」
≪NO(笑)≫
「まあね86歳になればいいか」
≪まあほどほどに飲んでますから適正飲酒ですよ≫
「奥様がお昼にミルク1杯とバナナにお汁粉ってなんですか?」
≪僕はね一日2食なんですよ。原則的に。塩分が恐いでしょ動脈硬化とか。塩分を除去するためのバナナとお汁粉。お汁粉っていってもねえ砂糖入れないの≫
「あずきで煮たやつ」
≪結構甘いんですよ≫
「塩分を取ってくれるんですか」
≪バナナも≫
「それで塩分が」
≪除去される。高血圧、動脈硬化になるでしょ塩分が多いと≫
「お医者様がおっしゃってるんですけど「うっそー」って言いたい感じですけどお医者様がおっしゃってるんで」
≪これは内科の先生に聞いたんですよ。私は精神化ですから≫
「それは知りませんでしたね。わたしはお汁粉たべるんですけどお砂糖入ってますから止めた方がいいですね」
≪僕が毎日食べさせられてるのは”大根おろし”と”わかめ”と”梅干”これだけは毎日出てきます≫
~CM~
黒柳「うらやましい話ですけど”あすか”という世界一周船にこれからお乗りになるんですね」
斎藤≪お客さんじゃないの僕講師なの船上講師という命令で。講演したりお客様の相談に乗ったり≫
「お医者様ですからね。インド洋から乗っててアイルランドまで乗る。奥様いらっしゃらないんですってね。お一人で」
≪これも講師ですね。一人だったらどうなるかっていう≫
「一番いいのは女の人がそばに寄ってくるだろうって(笑)それが一番大事ですかね」
≪そうですね≫
「またいらしてください。ありがとうございました