本日の徹子の部屋ゲストは西川のりおさん

2002年3月28日

黒柳「前回出ていただいたのが徹子の部屋は18年振りなんですよね」

西川≪はい≫

「私は”ほほー”と言ってるあいだに時間が過ぎてですねあっという間に終わって「ほな、さいなら」という感じで終わってしまったんです(笑)。お痩せになりましたね」

≪そうですね体重に変動があるんですけどもね≫

「なんといってもあなたのお母様って面白い方ですね」

≪そうですね≫

「お母さんのことを”おかん”って」

≪そうですね大阪では”お母ちゃん”とか言うんですけどねえ照れ隠しもあって”おかん”と呼んでるんですけどねえ≫

「本をお書きになられましてねこれは読売ヒューマンドキュメンタリー大賞の優秀賞を。これは五木寛之さんとかですね選考委員はですね椎名誠さんとかがお選びになられるんですね。選ばれた理由がですね題材のユニークさや面白さもさることながら文章が達者で驚いたと浪速女の典型ともいうべき人柄をえがかれていた。最初はゴーストライターかと思ったが本人が楽屋や旅興行で乗り物に乗ってるあいだに書いたことと分かってとても感心したと。これはうれしいことでしたよね」

※「おかんとおとん」という本を書かれた

≪そうですね選考が非常に厳しくてねベスト21の中に入ったといって新聞社の方が来られたんですよ。何で書いてるとワープロで書いてる方もいらっしゃいますけど僕は手書きなんですよ。手書きだったら指を見せてくれますかって僕はこういう風に”ペンだこ”があるわけですよ≫

「はい」

※のりおさんの指を見る黒柳さん

≪この32ページの5行目のくだりなんですけどこれはどういう感じだったですかって。だから僕は「これこれこういうことで」と答えてまたここはどうでしたかと聞かれるんですよ。つまりこういう風に何回もチェックするわけですよ≫

「つまりゴーストライターだといけないということですか?」

≪以前にそれがあったそうなんですよ。≫

「特に読売が出しているものですから本当にその方が出しているものなのかということが重要なんでしょうね。指を見せて」

≪最初ノートに下書きしてると言ったらそのノートも見せて筆跡も見て、最後受賞した時に一文を書いて僕の文体と似ているかと言うのも見て≫

「そこまで」

≪僕の文章をみんなで20回以上まわし読みしてタッチは分かってると≫

「それだったらうれしくていらしたでしょうね。なんでそこでお母様のことを書こうと思ったんですか」

≪亡くなってたんですけどねえ普通のおかんと違うというのはねえ僕らは小学生の頃から子供らしく育ててもらってないんですよね≫

「自転車屋さんですよね」

≪ええ親父が自転車屋をやってました。おかんが運送屋をやってるんですよ。≫

~ここで写真が登場。お母さんが亡くなる1年前に撮られたもの。病室でお母さんとのりおさんの写った写真~

「これお母様」

≪亡くなる1年ほど前なんですけどねこの写真を撮った時に「なぜ写真を撮った」と姉とかにえらく怒ったんですよ。「死ぬんやろ」と≫

「ええ」

≪それで姉から電話がありましてえらく気にしておると。僕もおかんが言ったことは正直同じ気持ちだったんですよ。僕は写真が欲しかったんですよ(お母さんとのりおさんの2人だけで撮った写真)≫

「お母様としては病気でもあるし自分では写真を撮った意味がわかってらした。私ドラマを拝見したんですが天童よしみさんがお母さんの役で天童さんは関西の方なんですね」

※本はドラマ化された

≪そうです≫

「よく感じがでてましたね」

≪もうちょっとスリムなんですけど(会場笑)感じはあんな感じで≫

「お父さん役は橋爪功さんがやって。お父さんは本当にあんな風におだやかであなたを理解していると言うか」

≪明治44年生まれで戦争にも行ってるんですが一度も僕の前で戦争の話をしたことはないんです。大したことはないと俺は2等兵だと。戦争が終わってから位が上がって上等兵になったんだと。それで僕に一回も手を出したことはないんです。”コラッ”っていうのもね大声じゃなくて本当に怒っているのかなと言う感じで怒られた記憶はないですね。≫

「お母さんにあなたがガンガン言われてる時にねえ慰めてくださって。」

≪気にするなよと≫

「そのお母様なんですがまあお金に厳しい方で」

≪普通は子供にはお金は”お金”っていいますよねでも小学生の僕に”ゼニ”って言うんですよ。「ゼニが無いのはなあ命が無いのも一緒やねん」ってやぶからぼうに言うから意味が分からんわけですよね。それはどういうことかといいますとお正月にお年玉をもらいましてねうれしいもんだから初詣に行って縁日でワーと使ってもうて50円しか残ってなかったんですよ。昔ですからコタツで寝転がってて着てる服も裏表着れるジャンパーありましたよね≫

「ありました」

≪よだれたらして寝てて。それで「こら!!のりお」とよそ行きの服によだれをたらしておまけに150円も使ったやろと。どういうことかというとゼニは逃げへんねんいざと言う時にいるねんと欲しいものが出てきてもお母ちゃんはお金かさへんぞと。で数日たって当時コルト45のモデルガンが流行っておったんですよ≫

「モデルガン。ピストルみたいなやつ」

≪それがガンベルトとセットで500円やったんですよ。(欲しくなって)お金が足らんもんやから「みんなが持ってる。みんなが持ってる」と言うたんですよ。そしたら「みんなみんなというなら、みんなが死んだらお前も死ぬのか」と。みんなが持ってるのにとうとう僕は150円がもらえずにその時言われたのが「あわてて使わんでええって言うのがわかったやろゼニは逃げへんのや」と≫

「なるほどあの時150円使わなければもともと500円もってらしたんだから買えたわけですよね。でもそれでも欲しいと言ったらお母さんは借用書を書けとか(笑)」

≪お金かしてやるわと言って僕に僕にお金をくれるわけですけどお金を借りたと書けというわけですよ、子供に。”私は何月何日お金を借りました”と。口約束やったらあとで借りたとか借りてへんとかあるからなと。横で親父がですね子供にそこまでやってやらんでいいやろといいながら「何ゆうてんねん!!子供といいながらみんな大人の心もってんねん。こいつらなあ都合のいい時だけ子供になりよんねん」って≫

「確かに子供と言ってもそのぐらいになったら大人と同じぐらいほとんどのこと分かってますよね」

≪子供が欲しがるものみんな買ってやってたら子供がだめになってしまうと。でも自分のためにはならないと分かってながら僕は欲しいなと思ってたんですけどね(笑)≫

「テレビでですけど天童よしみさんは腰のところにがま口みたいなのを下げてましたけど」

※テレビドラマの話。天童さんがお母さん役

≪いつでもパチパチさせてましてね一万円札でも8つに折るんですかねこんなに小さくしてました。なんで小さく折るねんと言ったらがま口であれば入れる金額は限られてると、市場に言ってお札をパッと広げると八百屋のおっちゃんにプレッシャーをかけられると≫

「すごいですね」

≪それも一番しまいかけの時(終わりかけの時)に買うんですよ。置いておいても仕方がないと。その時に上手く値切って買うと≫

「値切るの上手かったんですってねえ」

≪上手かったですね。今でも僕使ってますけどねえ≫

黒柳「値切り方ですけどお母様の値切り方はどういうところがお上手」

西川≪一番僕の中に残ってるのが当時テレビと言うのは非常に高級品だったんですよ。近所でねテレビが1台もなかった時代だったんですよ。うちが1台目だったと思うんですけど≫

「すごいですね」

≪こんな大きな14インチの真空管のテレビをねおやつだといってもお金もくれないのに「テレビを買いに行こう」と。東京で言えば秋葉原みたいなところが大阪に日本橋と言うのがあるんですよ。当時(テレビは)サラリーマンの給料の3,4、5月分ぐらいしたと思うんですよ≫

「そうですね」

≪当時テレビの値札が14万8000円とついてたんですよ。あちこち見て回ってないのに見て回ったようにしてるんですよ。(店員に)テレビいくらになると。必ず自分から安くしてくれとは言わないんですよ。「(店員が)奥さんはいくらにしてほしいですか」と。いや買うほうやからそちらから値段を聞きたいと。(店員が)14万ジャストと言ったらそうくると思ったよと。よくあるパターンだねと(会場笑)≫

「むふーん」

≪「じゃあ、そしたら13万で」っていうとその”そしたら13万”ってその判断はどこから来るわけって。店員も計算しなおして12万5000円でどうですかと。そしたらおかんはメモを広げて「おたく商売下手やは」とどういうことかというと他はもっと安いよと。何もメモには書いてないんですよ≫

「うーん。しかもパンフレット持って」

≪10万もしたら高いはと。私はお金は持ってるから安かったら買うだけで性能の説明なんかしてくれなくていのよと言ってパッと出るんですよ。店員が「ちょっと奥さん」と(言って追いかけてくる。店に戻って)戻ってきて向うは売りたそうな顔してるんですよ。僕は欲しそうな顔してる。そしたら欲しそうな顔するな足元見られる!!って≫

「ほおー」

≪「電気屋みたいなものはなんぼでもあんのや」と僕と兄貴は欲しそうな顔してるから買う側の方が強いんやとお金を物に変えるのは簡単やけどな物をお金に変えるのは難しいやと。向うは売りたいねんと。そしたら封筒からお金を出して数え出すんですよ≫

「ふん」

≪10何万あるわけですよ。それからどんどん下がっていって向うが7万5000円って言った時に「7万円やったら買おうかな」って言ったんですよ。≫

「それでも半分ですよね」

≪その前に一杯備品みたいなの付けさせてるんですよ。「奥さん一杯備品付けたじゃないですか」って言ったらそれはおたくが好きで付けたんやないのって≫

「フフフ(笑)」

≪それも含めて7万ですかと。配達しないとダメなんで一応配達サービスさせてもらいますと向うの店員さんが言うたんですよ。え!!配達料いくらかかかるのって(おかんが)聞いたら5000円ですと。そしたら6万5000円やねと言うたんですよ。うちの商売ね運送屋やからトラックあるのよって僕らに手伝いなさいって。僕らは唖然としましたけどね別に安く買ったていう顔はしないんですよ。まだもうけとるって言って向うで店員さんが「きびしい、きびしい」って≫

「テレビドラマの中ではあなたの師匠(西川きよしさん)がやってらっしゃいましたよね。ずいぶん安くお買いになられましたわね」

≪それでトラックにのりながら僕らに言ったのが商売人は薄利だろうと儲けが出なければ売らないと心配するなと車の中で言いましたよね≫

「でもテレビがきたらうれしかったんでしょ」

≪見るときに僕そんなに友達いないのに一杯友達が来るわけですよ。「のりお。お前そんなに友達おったか」と「お前利用されてるんと違うか」と「テレビが来たから友達増えたんと違うか」と。お前もたまに人のうち遊びに行ってやれと≫

「なるほどねいまでもそのお母様の教えはあなたが物を買うときには役に立ってますか?」

≪ありますねだから僕は相手から値段を言わすようにしてますね≫

黒柳「あなたが漫才をやりたいと、西川きよしさんのとこに行くんだとなった時にお父様は」

西川≪「まあ、おかんに聞けや」とおかんはやってもいいよ。でも何の協力もしないよ。うちは見ての通り商売人の家だ。いっさいがっさい協力しないから行きたかったら行ってこいと。当時うちの師匠の家に通っていてやっぱり高校上がりたてで子供のようじゃないですか。弟子の修行は辛いわけですよ。パッと家で寝たらすぐに朝なんですよ。今日は3時間しか寝てないとか2時間とか5時間とかあってある時京都の仕事で5日間ぐらい泊まりこめと言われてたんですよ。また極端に睡眠時間が減ったんですよ。師匠から「お前辛いのか!!」と言われたんで「はい。辛いです。もうフラフラで我慢できません」と僕は言ったんですよ。そしたら「帰れ!!首だ」と言われて家に帰ってしばらく10時ごろまで寝てる時におかんが「お前師匠のとこに行かんでいいのか」って言われたんで「いや休み休み」っていったんですよ。で次の日に生放送で出たはるよと言われたんですけどまた「休み休み」と言ったんですよ。気付いてたのか知らないんですけど1週間休み超えてるわけですよ≫

「本当は首になってるんですからね」

≪はい。でうちの師匠からおかんと親父が亡くなってから「お父さんとお母さんはお前の漫才の功労者や」とお前が漫才できてるのはお父さんとお母さんのお陰やぞと。僕が休み休みと言ったちょうど4日目ぐらいに菓子折りを持ってうちの師匠のとこに「うちの息子を許してください」と言いに行ってたんです。師匠は「いやあ頭を下げないでください。うちの親と同じ歳の人に頭を下げられては困ります」と。謝ること1時間以上謝ったと言うわけですよ。≫

「おかんとお父さんが」

≪はい。恐れ知らずにうちの師匠から電話があって「お前来いよ」と。「前のことは忘れたから付け」と≫

「また働けと」

≪それで師匠のとこに戻りましてデビューにいたったんですけど≫

「西川きよしさんの気持ちが変わったぐらいにあなたは思っていたらお母様が亡くなってから今の話が」

≪おやじとおかんは一切それを言わずに墓に行ってしまったんです。墓参りに行ってなかったらおとんとおかんがいなかったら目の前(黒柳さんの前)でしゃべらせてもらってないのも事実なんで≫

「謝ってくれなかたら違う仕事になってしまったかもしれないと」

≪師匠に言われなかったら知らなかったんで。でも知った時は2人ともいないと≫

黒柳「本当によく働いたお父様お母様なんですけど今のお話はドラマで見たんですけど読売ヒューマンドキュメンタリー大賞優秀賞に選ばれるために原稿を渡してあって本にはなってなかったんですね」

西川≪本にはなったんですけど正式な本にはなってなかったんですね≫

「今度」

≪”おとんとおかん”というタイトルで≫

「おかんはさっき話されたことが入ってる」

≪はい。新聞で一年連載されたものがここに入ってます≫

「子供は分かってないようだけど本当はよく分かってるんだと」

≪それと何かひとつぐらい取り柄のある子供になれと。足が速いとか、相撲が強いとか、字が上手いとか何でもいいと。親父はいつも働いてましたのでね何が楽しくてそんなに働いてんねと最後亡くなる時に病院に入ったときに「家族みんなで食事する時が楽しいから働いた」と言ってました≫

「まあー(顔を手でおおって)いいお父様でしたねえ。今そんなにないじゃないですかそのために働いたってねえ」

≪そんなにいいおかずじゃないんですけどね≫

「家族全員が一緒の食卓を囲んで顔を見合わせて笑ったりとかそれがどんなに大切かっていうことがみんな忘れちゃってるって言うと変ですけどそんなに大切だと思わなくなっちゃてるんでしょうね。でもお母様はよその家でしゃれたものを食べてくると」

≪あれは外国のドラマだと≫

「そうなんですって。あれはアメリカにあこがれてるんやって。我らわ日本人やからこれでいいのやって。さすが賞もらうだけの今までに無いタイプの浪速のお母さんでありますよね。」

≪そうですね≫

「ありがとうございました。作家としてもがんばってください」

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