本日の徹子の部屋ゲストは春風亭柳昇さん

2002年5月13日

黒柳「よくいらして下さいました春風亭柳昇さんです。関東では(柳家)小さんさんが最長老?」

柳昇≪そうですね≫

「柳昇さんは2番目?」

≪2番目ですね。こんな歳になるとは思っても見なかったですね≫

「お元気そうなんですけども」

≪おかげさまで親がいい体を作ってくれたんでしょうね。≫

「お弟子さんもたくさんいらっしゃって」

≪弟子18人孫弟子9人になっちゃって。≫

「今はみなさん(他の落語家さんは)お弟子さんをお取りになってないんですって?」

≪私はすぐに弟子に取っちゃうんですよ。というのは私が師匠のとこに弟子入りに行くのに1年考えました。なって成功するのか才能があるのかそれより師匠はとってくっれるのか毎日悩んで悩んで行ったらば「そうかい」と言ってすぐに弟子にしてくれたんでそれからは私のとこにくるのも悩んで悩んできたんだと思うんで18人になっちゃたんです≫

「最近のお弟子さんで1人女の人が入ったんですって?」

≪楽屋に来たんでファンの子かと思ったら弟子にしてくださいって。この歳になってねえ弟子の面倒を見るのは大変だから他にいいお師匠さんを紹介するよと言ったら「柳昇師匠じゃいやだ」って言うんですね≫

「(そういわれたことで柳昇さんが)ニコニコしながら。うれしいんじゃないですか(笑)」

≪その一言で私もまだ若いんだなっと。若い子から見てまだジジイに見えないんだと思って弟子にしたら上さんは怒るし娘は怒るし弟子は文句いうし≫

「そうなんですってねえ。皆さんは文句を言ったそうですけども孫弟子まで含めて27人も。今まで一門会というのをやったことがない?」

≪やってみたいなーと思って5月の31日に新宿末広亭でやります≫

「まだお若いでしょ(笑)。81歳ですよこれだけの落語家になってやってみたいなーと思ってたところがお若いなと思うんですけども(笑)」

≪やったことないんですよ。自分ひとりでは毎日やってますけどね≫

「(そのポスター登場)お昼の部が12時ですね。午後の部がちょっと中途半端なんですけども4時45分からです。ところが出る人数が多いものですから27人で師匠(柳昇)もおでになるんでしょ。大変なんでしょ?」

≪大変なんですよ。誰を削ろうかと思ってねえ(笑)削っちゃかわいそうだと思って≫

「短いお話でもいいから。もう皆さんやってらっしゃる方は多いんでしょ?」

≪やってるんでしょうね。あまり知らないですけど≫

「他所のことには関心を持ってないみたいですけども。珍しいんですけども女性のファンクラブがあると伺ってますけども?」

≪何年か前にできまして(ファンクラブの会員の)大半は結婚して子供もいますが若い人は何か言ってくれるんですね注意してくれるんですよ。≫

「どういうことを?」

≪古いことを言っても自分では気付かないんですね。「師匠それは古いですよ」とかねそうかなっと思って。仲間はね私ぐらいになると誰もいわないんですよ。「どうです」って言ったら「結構です」としか言わないんですよ(会場笑)≫

「参考になりますか?」

≪落語と言うのはねえ自分で言ったものをテープ聞いてもわかんないんですよ。≫

「どうしていいかとは?どこで笑っていいかとかですか?」

≪上手くないのは分かりますが≫

「TBSで「私は上手くないです」とか言ったら「謙遜も度が過ぎるといやみですよ」って若い人に言われたって。」

≪ディレクターに言ったんですよ「何年経ってもうまくなりません」って言ったら「師匠ねえ度が過ぎるといやみですよ」って。自慢してもいけないし謙遜してもいけないし世の中難しいものだと思いますけどねえ(会場笑)≫

「今でもお勉強をなさってるんですけどもとっても(落語の)練習をなさってるんですよね?」

≪勉強していかないとね昔の人を見ているとね歳をとっていくと売れなくなっちゃうんですね。なぜかな?と思ったんですね。力がなくなることは事実ですが30年40年同じ物をやってるんですね≫

「古典落語とかはね」

≪お客も飽きれば自分も飽きちゃって芸が出し殻になっちゃうんですね≫

「新鮮じゃない?」

≪新鮮じゃなくなっちゃう。あのエンショウやイマスケなんて師匠は80になっても稽古してました。だから常に新しいものに挑戦していく気持ちならば大丈夫かなと思いまして≫

「そうですか」

≪またあれ(何回も繰り返しやっている話)をやるのかなあーと思うと講座をを降りて早く帰りたくなっちゃう。お客さんもつまんないんだろうなと思うんですね。自分が燃えてないと≫

「面白い話を見つけてやると思面白い」

≪できた時には楽しくて楽しくて寄席に行くのが待ち遠しいぐらい楽しいですね。同じ物ばっかしやるとまたあれやんのかなあと思っていくのがいやになっちゃうんですね。≫

「そういうのを若い人は見抜く?」

≪お客さんは見抜くでしょうね。芸が出しがらっていうのはねえ≫

「芸が出しがら(笑)。そうすると自分の話たものをテープかなんかに吹き込んでお聞きになるんですか?」

≪八百屋さんでもお魚屋さんでも毎朝仕入れに行って商売してるんですよ。噺家(はなしか)だって仕入れしないといけないってやっと気が付きました≫

「みなさん小さい頃からやってらっしゃるから話は頭にあっていつでもできると思ってらっしゃるからねえ」

≪勉強してねえテレビでやったらば視聴者からはがきが来まして稽古不足も甚だしい、あまり視聴者をバカにするなって。ということは私はかなり稽古をしたつもりですが他の方は何百回とやってるんですね≫

「古典落語を」

≪ええその中でやると稽古不足が目立つんでしょうね。もっともっと稽古しなければと教えられました≫

「そういう”やだなあ~”と思うお手紙でもありがたいですか?」

≪ありがたいですね。自分では気付かないんですから。天の神のお告げだと思って≫

「それがお元気の素なんでしょうかね?」

≪そうでしょうね。風引くと稽古する気はなくなりますね。だから健康じゃないといけないなっと思いますね≫

「でも富士山に10何回お登りになって。毎年毎年お登りになってファンクラブの人も一緒にお登りになるんですね。8合目でお泊りになるんですか?お登りになって」

≪そうですね夜中に起きて頂上に向かうんですが≫

※一気に頂上まで登らずにいったん8合目で泊まってから頂上に向かう

「頂上で日の出をみる」

≪ご来光を見ます。夏ですと(日の出は)4時50分か5時ごろになるんですね。ご来光の美しさは絵にもかけないものですねギラギラギラとして。金をとばしたらこういう風な状態になるのかなっと思って。≫

「昔の人が(ご来光に向かって)手を合わしたのも分かるような。」

≪富士山は登るときは楽なんですよ、苦しくて歩かないから。深呼吸して2,3歩歩けば胸がドキドキして。ですから呼吸は苦しいけども肉体的にはあまり骨が折れないんですね。帰りに参っちゃうんですね≫

「帰りはどうなるんですか?」

≪富士山は石炭がらを集めたような山で(石で)ごろごろしていて転びそうになるそれを転ばないように抑えるそれでくたびれちゃうんですね≫

「後ろ向きにおりっちゃダメですかね?(会場笑)」

≪それやってみたけどもダメですね(会場笑)。昔は”スバシレ”と言って8合目から滑って降りるところがあったんですよ。それが何年か前の落石事故で中断になってしまってですから今度は歩いて降りないといけなくなってしまって≫

「私もどこかの低い山で(降りる時に)走っちゃうんですね急なものだからすると膝がガクガクとなっちゃうんですね」

≪でもう(登るのは)嫌だと思って降りてフッと振りかえってみるとはるかかなたに富士の頂が浮いてるんですね「あんなとこまで登ったんだ」と。人のできないことをやったような気がしましてまた来年も行こうということになるんです≫

「さっきもおみ足がスタスタでいいと思ったら長く座ってると今度は立つ時に大変なんですって?」

≪足を鍛えて良いんですけどもね長く座ってると今度たつときに骨が折れちゃって。さっと立ってすぐに歩けないんですね。(寄席では)立ち上がって調子を整えてただ立ってるだけじゃつまらないからお辞儀をして(黒柳笑)時間をつぶすとやっと歩き出せるんですよ。≫

「長く座ってるとスタスタ(歩くことに)なれちゃってるんですかね?」

≪そうですね曲がった状態のまま伸びないんですね(笑)ですから両方上手くいかないものですね≫

「(笑)。でもそういう風にのん気にしてらっしゃるところがお元気なところなんですかね?」

≪そうですかね≫

「でも戦争にいかれてお怪我もされてるんですからそういうことを思いわずらう人は思いわずうらうでしょうね」

≪昔に人間ですから兵隊に行くのは好きで行きましたね。≫

「好きでいかれましたか」

≪当時は国のためにやってるんだというすごい満足感がありましたね。今は自分のためですね当時は国のためというすごい満足感で充実していたような気がします≫

「すごい(戦争で)怪我をされたそうですけども自分で行った事だから(後悔はない/嫌な思い出ではない)というんでしょうか」

≪それで船に乗って機銃操作(※敵の飛行機から機関銃で撃たれた)でやられたんですけども足の間に撃ってきやがるんですけども「こんなとこに撃ってきやがるんだな」と思ってちょっと外れてたら当たってたんでしょうけどもあたしには(敵の)弾は当たんないという気持ちがあるんで≫

「どこの飛行機が撃ってくるんですか?」

≪上海の沖合いでアメリカの飛行機がです。私も(反撃で)撃ったんですけども当たってるんですけども(敵機は)落ちないんですね。落ちないというのはつまんないものですよ≫

「なかなか当たんないのかもしれないですよ」

≪でもそこで15人の兵隊がやられるのを見て「あーあ私もついにここでやられるんだな」っと。ましてや分隊長だから責任回避して帰るわけには行かないしと思ったときに別に死ぬのは恐いとは何も思いませんでしたね。誰かしら生き残ってくれて戦争が終ったら(柳昇さんの家族の)家に行ってくれて「あの人はこんなに立派にやって死んだんですよ」と言ってくれて。人間てのは死ぬまで欲があると思いました≫

「でもお若いですよねその時は何歳ですか?」

≪22,3です≫

「まあ本当に若いですよね。今じゃ考えられないですよね。」

≪親なんてなんも思わないんですよね。独身だし女房はいないしいつ死んでもいいなって(柳昇さんが兵隊にいかれている時は)そういう気持ちでしたよ。でも親としては大変だったでしょうね。子供は平気≫

黒柳「柳昇さんは発明家でもあります。それが実際売られてるものもあるんですけどもこれが」

柳昇≪”靴番君”といいましてお通夜なんかで知らない人が大勢集まるところで靴を間違えられたらもうおしまいなんですね。脱いで上がる時にこれを靴にさしといてそれに自分の名前を書いといて。間違えないように。履くときはこれが靴べらになるという≫

「はめておくとはっきり自分の靴だとわかる。だけどもこれは普通のとこ(店)では売ってないんですってねえ?」

≪寄席しか売ってないです(会場笑)どんなにいいものでも販売ルートがなければダメだって(会場笑)≫

「それからお考えになったのはすごく強力な目覚ましというのを。水が出る(会場笑)」

≪頭の上にボール(器)が置いてありましてベルがあって1分以内に止めないと水が引っかかって(会場笑)どんな寝坊でも起きられるという。≫

「すぐに止めないと水びたしになると言うことであんまり実用化(普及)しなかった?」

≪だめですねこれは≫

「そういうものを考えてらしゃると面白いですか?」

≪楽しいことですね≫

「金語楼さんという方も発明やってましたよね」

≪発明が好きな師匠でねあの師匠に刺激されたんじゃないんだろうけどもやぱり新作(落語)作るのと同じですね。≫

「ただ兵隊さんにいかれたときにねさっきCMの間にうかがったんですけども死んで行く同じ位の歳の人が。柳昇さんのほうが位が上だったんでしょ」

≪「隊長殿よろしく」と。つまり自分はこんなに立派にやって死んでいくんですから伝えて欲しいということだと思いましてね(戦争から)帰って来た時にねお母さんがまだ元気だったのであなたの息子さんはこんなに立派になって死にましたと言ったらお母さんは喜んでくれて「うちのせがれは偉かったんですね」って言ってくれまして。≫

「だけどその時生きてらしたから。それから56年落語をやられているそうですけども。そういうことを考えるとまた不思議な気もなさるでしょうね」

≪なんで私がこうやって生きているのかねえ。要するに弾が当たんなかったからですね。戦争が終って元いた会社ももう雇ってくれないと思って≫

「電気会社」

≪(戦争が終って家に戻って)朝起きるのが辛かったですね。仕事がないってこんなに辛いことはないですね。寝たらこのまま目が覚めないでいて欲しいなと思いましたね≫

「でもそのとき軍隊の中でみんなで演芸会みたいなのをやるときに(演芸会の)中で落語をやる人がいてその時初めて落語を聞いた?」

≪聞きました。病院で演芸会をやったんですね。その中で落語をやった人がいてずいぶん味のある喋りをする人だなっと思ってはじめてその時落語を聞きました≫

「軍隊の中に後の6代目春風亭リュウキョウさんの息子さんが」

≪いましたね。その時は噺家になろうとは思ってなかったんですがね(その息子さんが柳昇さんに)「家の親父の商売はいいよ」って「なんですか?」ったら月に3000円は稼ぐって。昭和15,6年ごろ家が一軒1000円で建つ頃なんですよ≫

「ええー」

≪だから毎月家が3軒建ったんですよ≫

「フフ(笑)」

≪昔は噺家の税金は犬と同じだったんですよ≫

「どういうことですか?」

≪犬と同じ金額≫

「じゃあ(税金が)安い」

≪そのときはやろうと思ってなかったんですが戦争に負けて(やることが)何もないんですね。それで噺家になろうと思って才能があるのかないのかわかんなくて師匠のとこに行ったら「親は面倒みんのか」というんで、私はねえ6人兄弟がいまして男は私1人なんですよ。(あとは)全部女。それで男らしいことで兵隊が好きだったのかもしれないですけども。≫

「そういうことで家族の面倒は見るのかとか言われちゃったんで。話はあれですけども家は3軒建つぐらい収入はあったんですか?」

≪私はとんでもないそれは師匠の話で。内の師匠は昭和の初期に売れたんですね≫

「わたしもリュウキョウさんというかたはテレビでお目にかかったんですがそんなに凄かったんですか。」

≪すごい大スターなんですね≫

黒柳「そういう落語も聞いたことがなくてでも落語はお金になるららしいと(落語家になろうと決めたのは)その時に占いが上手な看護婦さんがいて」

柳昇≪みんなが見てもらっていてねついでに見てもらったら「あなたは人に知られるような人になりますよ」って。ヒットラーほどは偉くはなんないけどね≫

「戦争中ですからね」

≪人に知られるってことは噺家になればいいのかなってそれで決心しましたね。≫

「占いが後押ししてくれたんですね。それでリュウキョウさんがいいよって言ってくださってお弟子さんにしてくだすったんですから」

≪それもね落語なんていうのは「食うためならよせ(生活していくためなら止めろ)」って言うんですね。好きじゃなきゃできないって言うんです。考えてねえ好きでやるよりは食うためのほうが真剣にやれるって。生きていかなければいけないんだから。それでお願いしますって言ったら「そうかい」といってすぐに弟子にしてくれたんです≫

「(好きじゃなくて食うためだというのを)ごまかして。修行している間はお金をもらえると思ったらいきなり2つ目になっちゃたんですって?」

※落語は”前座→2つ目→真打”と昇格する

≪いやいやそうしなさいと言われましたけども前座はその日立たなくてももらえるんですね。だから前座やらしてくださいって言って4年間前座やりましたけどね。今考えると4年の前座は大変いい勉強でした≫

「その当時はどういう方がいらしたんですか?」

≪桂米丸さん。それで初め見たのは下手な噺家がやってんですね。こんな下手なやつがプロで通じるなら私だってやれるだろう。3年経たないうちに3月ぐらいで追い抜いてみせるって入ったんですね。≫

黒柳「テレビ朝日文化事業団でビデオを発売しておりましてですね”春風亭柳昇の若返りのすすめ”というお休みになるときは恋愛小説を読みながらお休みになってるようですが”新作格言講座”これは山藤(章二)さんが表紙を書いてらっしゃるんですが”やぶ医者も名医を紹介できれば名医なり”とか他に女性に持てる方法とかもでてるそうですけどもまた師匠いらしてください」

柳昇≪どうも≫

「また富士山いらしゃるんでしょ。」

タイトルとURLをコピーしました