2002年5月23日
黒柳「ようこそいらして下さいました。BS朝日のサッカーの解説者でいらっしゃいます。スポーツエッセイストでもいらっしゃいます。そしてお若い時にサッカー選手を目指しておられた若者でいらっしゃいます。これ(徹子の部屋)もBSで撮ってるのでよく廊下でお会いしますが」
※BS朝日のスタジオで「徹子の部屋」とBS朝日のサッカー番組は収録されている
羽中田≪そうですねエレベーターの中でも何回か(お会いした事があります)≫
「羽中田(はちゅうだ)さんのおでになった高校はあのサッカーの中田選手の先輩に当たる」
※中田選手=現在(14/5・23)イタリアセリエAのパルマに所属のサッカー選手
≪そうですね≫
「あなたと友達があの高校をサッカーで有名にしようとした韮崎(にらさき)高校。中田さんもそこ(韮崎高校)がサッカーが強いからそこに入ってらしたわけでしょ?」
≪彼も強いところでサッカーがやりたくて高校サッカー選手権で日本一になりたいと言う事で入ってきたと思うんですね。僕達とは歳が離れているので知っているかどうかはわからないんですけどねえ≫
「でもお話によると羽中田さんともう1人のお友達が今の韮崎高校のサッカー部をすごくしたと言えるんですが。その方とは違う学校(中学校)の方だったんですって?」
≪中学が違いまして中学3年の冬ですか受験の前なんですけども彼から電話がありまして一緒に韮崎高校に行って日本一を目指そうという電話をもらったんですね。それで僕もその韮崎高校に行く事を決めましたね≫
「中学は別々だったんだけどもサッカーの試合の時にお友達になった。その方が保坂君」
≪保坂孝君です。≫
「2人で山梨県韮崎高校に入ってこの高校を2人で有名にしようと保坂君が言ったんですね」
≪そうです≫
「その時すでにその高校ではサッカー(部)はあったんですか?」
≪はい名門の高校で≫
「サッカーとしては」
≪山梨県の中では常に代表になっている強い高校だったんですね。≫
「サッカー少年としては入りたい高校で」
≪そうですね山梨県のサッカー少年は入りたい高校でした≫
「そのお電話がきっかけであなたもお入りになって。その保坂君は今どうしています?」
≪彼も社会人のサッカーチームに入っていて現役を引退して普通の社会人としてやっていたんですが結局サッカーの世界に戻りたくてヴァンフォーレ甲府というプロサッカーチームのコーチをしています。≫
「そうですか今でも保坂君はサッカーと共にいると言う事で。あなたもそうなんですけども。今日は写真をお持ちいただいたんですけども車イスに乗ってられるので当時の元気な時のサッカーをやってられる写真を見るとどういうお気持ちですか?」
≪うーんやっぱりもう一回ボールを蹴ってみたいというのは正直ありますね。≫
「そうだと思います。今ブルーの洋服(ユニフォーム)を着てらっしゃるのがそうなんですね。」
≪これは高校2年生の時の冬の高校サッカー日本選手権の決勝戦の時ですね。対戦相手がブナン高校なんですけども負けてしまったんですね≫
「準優勝というか2位ということですかね。1年生の時が3位で2,3年生の時が準優勝ということで」
≪そうですね≫
「やっぱり韮崎高校はすごいなってみんなが」
≪そうですね。注目してもらえて。でも保坂孝君と約束した日本一にはなれなかったんですね≫
「(韮崎高校が試合に負けて羽中田さんが泣かれている写真が登場)これは泣いたんですか?」
≪負けて悔しくて。でも終ってしまったなっていう感じで泣いてしまったんですね。≫
「3年生だったらこれで終わりだなっていう。でも韮崎は有名でチケットの写真は韮崎が使われたんですか?」
※チケットの写真に羽中田さんがドリブルしている写真を使用
≪この次の年のチケットがたまたま僕がドリブルをしているシーンを使ってくれて≫
「本当にすごい選手だと思います。この時はまだJリーグというのがなかったんだけども20歳から下の選手に選ばれてらっしゃった」
≪ユースというんですけども。ユース代表の候補でしたね≫
「その時はJリーグは無かったんですがJリーグがもしできていたらおは入りになれた?」
≪だったと思いますけどね。そうだといいなって≫
「まあ入ったとしましょう(羽中田笑・会場笑)。(高校は卒業して)大学に入ってもサッカーは続けていこうと」
≪そうですね≫
「大学に行こうとしてすべって浪人生活をしてらした」
≪はい≫
「夏に実家に帰って実家の友達に」
≪そうなんです。夏休みに入って高校3年の時のクラス会を開くということで浪人生がどうなのかなて思ったんですが勉強しなきゃいけないのかなって思ったんですが、まあたまには息抜きもいいと思って帰ったんですね。その時にバイク・・50ccのバイクなんですけども事故にあって≫
「それも今思うと悔しいんだけども友達のところへクラス会の打ち合わせに行く前に電話をしてそのお友達がいないとわかったら行かなかったのに」
≪そうですね≫
「そういうのくやしいでしょうね。後からね」
≪行く前に電話を1本入れとけば事故にはあわなかったんですね。≫
「行くだけ行ってみようと行ったらば友達がいなかったのでそれで帰ってらっしゃる途中で」
≪そうなんです≫
「50ccというと小さいですよね」
≪そうですね。そんなにスピードもでないですからね。スピードは出してなかったと思うんですがとがった釘を踏んで前輪がパンクして路上に放り出されて(体が)3回転ぐらい回ってその後ガードレールに背中を叩きつけられて多分脊髄損傷。車椅子の生活ですよね≫
「まあそんなこと言ってもしょうがないんですけどもあなたはその事を何回も何回も思ったと思うんですよね。あの時電話をして(友人が)いないとわかったら行かなかったんだと。事故にも会わなかったしガードレールに背中をぶつけなければこうはならなかったと。いろいろあると思うんですが(事故にあって)救急車が来る前に白いエプロンをかけたおばさんが言ってくれたことを思い出すんですって」
≪事故を見て何人かの人が集まってきてくれてその中に白いエプロンをかけたおばさんがいて(羽中田さんが)立てないと思った瞬間に足が動かないと思った瞬間に「なんで俺ばっかり」と叫んでしまったんですね。それを聞いたおばさんが「世の中そんなに悪い事ばっかりじゃないよ」って言ってくれたんですよ≫
「それをはっきり覚えてらっしゃるの」
≪はい。顔とかは覚えてないんですけども≫
「「なんで俺ばっかり」というのは足を必要としているサッカーの選手なのにっていうものがね」
≪それもあると思いますしその前に急性腎炎という病気もしたんですね。そういうことが続いたっていう事もあるんですけどね≫
「その後に病院にお入りになって頭蓋骨・・・」
≪体が動かないようにするために頭に4ヶ所ぐらい穴をあけて後、腰にも穴を開けてステンレスの棒で体を固定して動かないようにしたんですよね≫
「でもあなたはこれが全部終れば治るだろうって」
≪期待はしてましたね≫
「でもかなりの損傷だろうということもお分かりになって」
≪わかってました。でももしかしたら治るんじゃないかなって≫
「その後リハビリを。何ヵ月後ですかね?」
≪3ヶ月間棒でつないで1ヶ月間ベット上でそれで5ヶ月目からリハビリに入ったんですけども。≫
「あなたが思ってるようなリハビリではなかった」
≪山梨県の病院で入院してたんですけどもリハビリの段階で神奈川県の厚木にあるリハビリテェーション病院に移ったんですよね。すごい厳しかったんですね≫
「このリハビリに行けば自分は歩けるようになって何かできると思ってました?」
≪山梨県の病院を出る前に主治医の先生からあなたの足は一生動かないから車イスの人としてのリハビリをしてきてくださいと。それを聞いた時はもう動かないんだなってかなりショックでしたね≫
「リハビリというと普通歩けるようになるリハビリだと普通思いますよね。」
≪車椅子に乗って社会復帰をするためのリハビリをしてきてくれって言われたんですよね≫
「19歳になったばかりの夏に自分でやったこととはいえそれを受け止めるのは大変だったでしょうね」
≪そうですね事故したときも終ったんですが先生から言われたときも全てのものを失ってしまったなあと思いましたね≫
「普通だって大変なことなのにサッカーの選手ですからね」
≪はい。サッカーばかりやってきた人間だったので≫
「ただその時に救いといえば”マユミちゃん”」
≪(恥ずかしそうに笑顔)≫
「その頃マユミちゃんという女の子とお付き合いがあった」
≪そうですね事故する前から付き合いがありましたね≫
「(マユミさんが)病院にお見舞いに行きたいって言ったんだけどもあなたは「こないで」って」
≪はい。家族に言ってマユミちゃんに来させないようにというんですかお願いしてずっと会わなかったんですね。≫
「それで神奈川の病院にいらっしゃったんですが。ある日マユミちゃんが・・・ちょっとコマーシャルいっていいですか(会場笑)」
≪はい(笑)≫
黒柳「ある日マユミちゃんが」
羽中田≪神奈川県のリハビリテェーション病院にきてくれたんですよね。≫
「(マユミさんが羽中田さんに)「来ちゃった」っていったんですって」
≪そうですね。≫
「でもその時にあなたは車イスにのるリハビリでもう「さようなら」って言うつもりだったんだけども」
≪ちょうど向うに行ってから1週間ぐらいですよね。リハビリ厳しくてもうこんな生活耐え切れないというぐらい厳しくて。でも彼女の「へへ、来ちゃった」っていう言葉を聞いてですね”ああ!がんばってみようかな”って≫
「よかったですね。がんばれたのもマユミちゃんのお陰だと思いますものね。」
≪そうですね≫
「でもあなたはその時に大学には行かないで通信講座で大学卒業の資格をとろうと」
≪いや大学に行かずにですね県庁職員になろうとですね公務員になろうとですね一般教養というやつですか。1年間勉強したんですけども≫
「県庁にお入りになったんですよね」
≪そうです。社会復帰ということで≫
「それでめでたくマユミちゃんとゴールインということで結婚式を」
≪そうなんですよ。はい≫
「どういうお気持ちですか?」
≪うれしかったし隣に彼女がいてくれる事で自分に自信が持てたというか自分も結婚できたんだっていう事で≫
「(結婚式は)何年前ぐらいになりますかね?」
≪12年前ぐらいになりますね≫
「それでマユミちゃんの偉いところはあなたも必要だしということで針灸師の」
≪結婚して中国のほうに行ったんですけども1年3ヶ月ぐらい向うの方に住んだんですけども気功治療に≫
「別れて(単身で)?」
≪いえ一緒に。やはり直りたいということで最後に中国に行ってダメだったらあきらめようという事で。逆にあきらめに行くために言ったのかもしれないですけども。気功治療に行ったんですけども≫
「針とか針灸とか気功とかに。」」
≪で彼女が東洋医学というものに興味を持って(日本に)帰ってきてから針灸の免許を取ったんですけども≫
「そうこうしているうちに国立競技場に(サッカーの)試合を見にいらした」
≪Jリーグがはじまって最初テレビで見たときは日本のサッカーもここまできたんだという思いで見たんですけどもそれから開幕して1ヶ月ぐらいして国立競技場に生の試合を見にいったんですよね。で、その時に”口惜しい”って思ったんですね。なんかグラウンドで昔(一緒にサッカー)をやった仲間たちがプレーをしていてなんで俺がここにいないんだっていう思いがあったんでしょうね。≫
「それで県庁にお勤めだったんですけもサッカーと段々離れられなくなっていく」
≪口惜しいというのはどういう気持ちなんだろうかなって思うともう一度サッカーの世界に戻りたいという気持ちに達したんですね。≫
「県庁のみんなはそういう気持ちをわかってくれましたか?」
≪そうですね・・・最終的にわかってくれました。≫
「県庁の税務課というところにお勤めだったそうですけども”0(ゼロ)”がたくさんある仕事で中々大変だったそうですけども」
≪そうです(笑)≫
黒柳「県庁を辞める時に県庁の皆さんがおっしゃってくださった(言葉)のは」
羽中田≪はい。「有名になってね羽中田君」と上司の女性の方がおっしゃってくれたんですけどもね。その時に僕が「徹子の部屋に出れるようにがんばってきます」って言ったんですけどね≫
「ああ!あなたがそうおっしゃってくれたんですか」
≪はい僕がそういいました≫
「そうですか。ありがとうございます。そう言っていただいて。あの県庁の皆さんにカメラに向かって(コメントを)」
≪あの~(会場笑)出れました。≫
「みなさん本当に優しくしていただいてありがとうございました。やさしくしていただいてありがとうございました。お母さんでもないのに(ありがとうって)言うのはおかしいんですけどもね(会場笑)。それでそこで考えて子供にサッカーを教えるようになろうと。それで教えるなら勉強しようと本場に」
≪そうですねプレーヤーとしては戻れないんで指導者として子供たちにサッカーを教えようと決めたんですね≫
「スペインに。」
≪本物を感じた上で子供たちに指導した方が伝わる言葉が出るんじゃないかなって思ったんですね。≫
「スペイン語だって勉強しないとダメだったろうし奥様も一緒にいらっしゃって。バルセロナにコーチングスクールというのがあるんですか。」
≪スペインサッカースクール主催のコーチングスクールがありましてライセンスを取る学校なんですがそこに2年間通いました≫
「それでVTRがあるんですけども子供たちにサッカーを教えてらっしゃるところかしら」
≪そうですね小学校で教えてるんですけども≫
~VTR再生~
「そうかコーチというのは本当は自分で見せるというのが必要なんですかね。」
≪子供たちの指導にとっては見本を見せるということが必要ですよね。≫
「それを全部口で教えなければなんないというのが」
≪そうですね僕には見本を見せる事ができませんからね。違う形で伝えていかなければいけないって言う事ですよね。≫
「でもあなたが教えて子供たちが上手くなってゆけばね車イスのひとでも教えられるという風になっていけばね。」
≪はい≫
「どうでもいいですけどもマイクみたいなのをつけずに肉声でおっしゃってるんですか?」
※子供たちに指導する時にマイクや拡声器を使わず肉声で指導している事について
≪そうですね≫
「私余計な事ですけどもスピーカーみたいなのを置いといて子供たちにそんなにすごい声を張り上げないでもあのほこりの中をですね。段々声が悪くなりますので。マイクロフォンあるじゃないですかああいうのをお使いになったほうがいいと思いますよ」
≪そういわれたの初めてなんですけども(会場笑)。肉声の方が伝わる・・・≫
「そうですけどもあれだけ大きな声をだしっぱなしでずっとでしょう」
≪そうです。やはり活動範囲は狭いのでいろいろな工夫をしていかないと。いまおっしゃったことも≫
黒柳「そして羽中田さんはこのたび絵本をお書きになったんです。絵本と言っても字がずいぶんあるんですけども」
羽中田≪はい。僕はストーリーのほうをですね(担当したんですが)。≫
「”そこからはじまる”という(タイトルの)」
≪そうですね≫
「これはほとんどあなたの生活と同じような」
≪こうなったらいいなって言う僕の理想を書いたんですけども。失敗を恐れずに広い世界に出てもらいたいなっていうそんな願いも。まあそれぞれどんな風に感じてもらってもいいんですけども僕はそんな願いをこめましたね≫
「車イスのコーチとサッカー少年とのお話」
≪そうです≫
「この本がきっかけであなたにコーチをしてほしいって言う人が出てきてどんどんサッカーを・・・もちろん今BS朝日のサッカーの解説者でいらっしゃるんですが実際グラウンドにいらっしゃりたいでしょうからね」
≪はい。そこ目指してがんばってるわけですからぜひ行きたいです≫
「あのわかんないんですけどもボールを蹴ったときや人が滑ったときのジャリジャリっていう音がありますよね?サッカー場は草がはえてるんですか?」
≪芝生です≫
「でも学校やなんかで芝生が生えてなくて土のところでやってるでしょ。ああいうところでジャリジャリっていうそこでなければ無い臨場感が」
≪そうですね。またあの音も快感なんですけどもね≫
「そうですね。マユミちゃんと一緒にね・・・マユミちゃんは今のあなたの生活に対してどんな風に考えてるみたい」
≪あのサッカーの仕事が似合ってるよって言ってくれます。≫
「(羽中田さんが)車イスのリハビリをするから(マユミさんに)さようならって言ったのに「へへ来ちゃった」っておっしゃったぐらいですからね」
≪そうですね≫
「すごくわかってくれてるしあなたが元気な時からっていうか足が車イスじゃない時からあなたと付き合ってる方だから苦労を彼女は全部見てると言う事ですよね」
≪だと思います。てれますね≫
「照れるそうですよマユミちゃん。でもあなたがいてくれるから今日があるとさっきおっしゃってましたのでお2人でがんばって日本のサッカーもますますね子供たちが憧れてるのでよろしくお願いします」