2002年5月29日
黒柳「どうも」
木下≪こんにちは。よろしくお願いします≫
「津軽三味線ブームといわれてますが2年前に津軽三味線のチャンピオンばかりが集まって16人?」
≪はい≫
「その中で勝ってチャンピオンにおなりになった方なんですから。ですから実質日本一と紹介したんですけども。いわゆるジョンガラ節風に徹子の部屋を演奏したらどうなるかとお願いしたものですからやっていただいてよろしいですか?」
≪はい。~演奏中~≫
「(大拍手)ありがとうございます。こういう元々メロディーがあるものなのでご面倒だとは思いますけども。実はさっき(津軽三味線を)普及させたいとおっしゃってたんで私持たせていただいたんです。そしたら重い。何キロありましたっけ?」
≪たぶん5キロ近くはあると思うんですけども。≫
「5キロ近くのものをここ(膝)に乗せるだけでも大変だとは思うんですけどもこの方は立ってお弾きになるときもあるんですね」
≪はい≫
「それでもっと驚きましたのは(黒柳さんが)三味線を弾く人の役をやったことがあるんですがバチがものすごく厚いんですね。このバチがああいう風に当たるんですね。だからねもうほとんど拷問状態。これもの(材質)はべっ甲?」
≪べっ甲と水牛の角ですね。≫
「(指が)痛いからって丸くしてはダメなんですよね。ここ(薬指と小指の間)にとどまっている事が大切。1日に16時間練習なすったり?」
≪そうですね子供の頃はとにかく三味線が引きたくて朝学校に行く前に練習して帰ってきたら寝るまで練習という毎日でしたね≫
「木下伸一さんは津軽の方じゃなくて和歌山の方なんですよ。でお父様は三味線の先生?」
≪はいそうです。≫
「お母様も昔旅回りの事をやってらしたんだけども物心ついた頃には和歌山にいらっしゃって。」
≪はい≫
「最初お父様は普通の三味線を教えて下すって、その後第一次津軽三味線ブームがきてお父様はそれをちょっとお勉強されてそれをあなたに教えてくだすった?」
≪はいそうです。今まで聞いてたものはわりとゆっくりしたものが多くて静かなものが多かったんですよ。それに対して津軽三味線はとても激しくてテンポが速い。それで即興で自分のオリジナルの曲を演奏してるということを聴いてびっくりしたんですよ。≫
「ずっとやってらしたんですがその時に白川軍八郎さんのレコード(を聞いて)」
≪はいそうです。津軽三味線の神様と言われてる方で≫
「いつ頃の方なんでしょう?」
≪明治の末期に生まれた方で昭和の前半に活躍された方です。≫
「(白川軍八郎の)レコードはあるけどもここんところをゆっくり聞きたいのに(聞けない)」
≪そうですね。今みたいにテープをゆっくり(再生)させるということができなかったのでプレーヤーに綿をくっつけて回転に抵抗を与えて聞いていたんですけども≫
「この速い部分はどういう風にやっているのかとかを研究」
≪はいそうです≫
「朝学校にいかれる前に練習をして帰ってからは夜まで練習。途中で嫌になることは無かったんですか?」
≪そうですね好きで好きでしょうがなかったです≫
「ところが周りの子はロックとかをやっていますから学校の文化祭の時にまわりはロックとかをやっていますからこれ(津軽三味線)で出たらみんな笑うだろうなって」
≪笑われたんですよ。それまでね友達に三味線やってるって言えなかったんですけどもね一度友達の前で披露してみたいと。でないと一生懸命やっていても誰も知らないんじゃないかと。で文化祭で弾いたんですよ。そしたら三味線をもって出て行くと案の定みんなが笑うんですよね。思い切って弾き始めたら(笑っていた学生・友達が)シーンとなって≫
「バチンとやった時にシーンとなったんですか?」
≪そうです。演奏が終ったらものすごく拍手をくれて、その後もてるようになってですね≫
「女の子にですか?」
≪そうです。弾いて良かったなって思ったんですけどもね(笑)≫
「そうですか(笑)。やっぱり今の若い人にもわかってもらえるって自信はついたんじゃないすか?」
≪そうなんです≫
「でも今はロックの方たちと一緒にやってますよね?」
≪その時に自信がついていろんな人に聞いてもらいたい知ってもらいたい。なかなか純粋な津軽三味線の良さが伝わらなくて。≫
「お父様が民謡がすごくて(お父さんが)和歌山代表で上京(木下さんも一緒に上京)。民謡酒場という所にいらっしゃったら」
≪(東京の)民謡酒場というところに連れて行ってもらったらそれまでプロにどうやってなるのかがわからなかったんですが民謡酒場に行ったらば僕ぐらいのもう少し上ぐらいの人がシジョウしてたんですよ。こういう場所があるのかと。そこで修行したい働きたいと父に言ったんですけどもあっさり断られまして和歌山に帰ったんですがどうしても弾きたいという思いがあったんですが日が経つにつれてプロにはなれないんだろうなって自信が少しづつなくなりかけてたんですけども卒業式が終ったその日の夜に父が「明日東京に行くぞ」と言ってくれたんです。≫
「とにかくお父様は高校は出ろとおっしゃって。その日の夜に東京に行くぞ!!と。民謡酒場に行っていいんだと。それでお父様と一緒にいらっしゃって」
≪そうなんです。≫
「それで民謡酒場に行ってここで雇ってほしいというとオーナーはそこにいなかったんですって?」
≪そこで板前さんがオーナーに電話をしてあげるからということで電話をしてもらったんですよ。(オーナーに繋がって)受話器の前で演奏してみなさいとそこで試験をしてあげるからと。こう受話器を持ってですね(笑)≫
「電話でオーディション。歌ならともかく三味線」
≪それで演奏したら運悪くバチが折れちゃったんですよ。≫
「バチが当たると言うのはありますけどもね」
≪フフフ(笑)。折れちゃったんですよいきなり。落ちるかもと思ったんですけどもバチをさかさまにして一からやり直したんですね。そしたら今日から働いていいからということで≫
「女性のオーナーだったんですって。それから働くようになってチャンピオン大会とかに出るようになってそれから若い人でも三味線を弾くんだってわかるようになってええっと山田兄弟・・」
≪吉田兄弟≫
「(笑)。吉田兄弟とかアダツマさん。いろんな方がいらっしゃるんですけどもその方たちの先輩に当たる方なんですねこの方(木下さん)は。それにしても歴代の(津軽三味線の)チャンピオンが15,6人いてですよ。その中の1位にお成りになった2年前だそうですけどもその時はうれしかったでしょ?」
※津軽三味線の大会で優勝してチャンピオンに。そしてチャンピオンばかりを集めた大会で優勝
≪ものすごくうれしかったですね。なんとなく自信が持てたというかチャンピオンになったときもまぐれかなと思ってたんですけども優勝できた時は本当にうれしかったですね≫
「山田千里杯というので。(そのときの写真が登場)頭もこんな具合で(※髪の毛を逆立てて金髪)」
≪はいそうです(笑)≫
「でもそうですよね。どんな頭をしようと音楽を伝えるということにおいてはどんな頭をしようと良いわけで」
≪はい≫
「今日は演奏をしていただくんですが、いろんな曲がある中で”SHIーBUーKI”という曲を」
≪これは僕のオリジナルなんですけどもよく海をテーマにした曲が多いんですけども津軽の海を想像して作ったんですかとよく聞かれるんですけども僕は和歌山の海を想像して作ったんですよ。≫
「和歌山の海をすごいですよね~」
≪はい黒潮で≫
「昔は沖で鯨が潮を吹いていたりとかね。この音のどういうところを聞いて欲しいとお思いになります?」
≪力強さとそれと対照的な艶みたいなものをね≫
「セクシーなとこありますよね。不思議なね心揺さぶられるようなね」
≪パーカッションとの即興を聞いていただきたいですね≫
黒柳「それでは木下伸一さんに演奏してもらいます。よろしくお願いします」
木下≪~演奏中~≫
黒柳「いやあどうも本当にありがとうございました(大拍手)。いやあそれでもあの重い5キロ以上のものを肩に下げてやるのもすごいと思いましたが何ていうんでしょうねパーカッションと合わせて即興というんですか」
木下≪でも楽しいですね。お互いに音で会話をしているようなんですよ。≫
「下のほうのチョンチョンチョンというのがセクシーで女心をそそられるというような」
≪ああそうですか(笑)。≫
「力強いところがあってうかがってるうちにこっちも汗がだらだらになってくるんですよ。力はいって見てるせいでしょうかね?」
≪そうですね。≫
「せっかくですから昔からのジョンガラ節をやっていただいてよろしいですか?」
≪はい~ジョンガラ節演奏中~≫
「本当にありがとうございました(拍手)。よくあれですよね(三味線の)皮が破けないものですよね?」
≪皮よりもバチが折れるんです。≫
「でも演奏会にはこういうのを何時間とお弾きになるんですよね?」
≪そうです。≫
「さっきもおっしゃった白川軍八郎さんに少しでも近づきたいとおっしゃったけども(白川さんのレコード・テープを)今でもお聞きになることはありますか?」
≪CDは出てないんですけども古いテープがあるのでそれを毎日のように聞いてます。≫
「(白川さんの技術に)近づくような事はやてらっしゃるんですけども今はどうですか?」
≪なかなか近づけないですね。それぐらいすごいんですよ。本当に今の時代テープをゆっくり(再生)する事もできるんですけどもどうやって弾いてるかわからないんですよ。全部即興なんですけども2度と同じ手は使わないというか全部違うんですよ。ですからなかなか近づけないですね≫
「自分で新しいテクニックを使ったぞと思ってもその方のテープを聞いてみるとなんだやってるのかって」
≪本当にその通りです≫
「いまはこれだけ演奏会をやってらっしゃるんですが毎日練習してますか?」
≪今は演奏活動が忙しくてなかなか練習の日が取れないんですけども指を動かさなければいけないので車に乗ってる時にハンドルを片手に片方の手は動かしたり素振りをやったりというようなことはやってますね。≫
「人の演奏をお聞きになったら手が動いちゃうでしょ?」
≪そうですね≫
「今いろんな方と一緒に演奏されてるんですけどもジプシー・ヴァイオリンのすごい方と」
≪そうなんですよロビー・ラカトシュというすごい方と≫
「この方がすごい好きでね日本にしょっちゅう来られてわたしもよくコンサートに行くんですけども。この方と一緒におやりになられるのは楽しい?」
≪ものすごく楽しいですね。超絶技巧(ちょうぜつぎこう)とあの風貌というか見た感じがすごいですからプレッシャーを感じるんですよ。何度か共演しているんですがその度にプレッシャーを感じてよしぶつかっていくぞという気持ちにさせられるんですよ≫
黒柳「木下伸一さんとジプシー・ヴァイオリンのラカトシュさんのすごいコンサートがあります。ものすごい盛り上がると思うんですが6月6日に大阪のサンケイホール、6月8日東京厚生年金会館、6月10日広島アステールプラザ大ホール、6月12日名古屋・愛知厚生年金会館でおやりになられます。1999年にいらっしゃった時も一緒におやりになったそうなんで少し聞いてみたいです~曲が流れる~すごいですね」
木下≪ベルギーまで録音に行きました。≫
「いやあすごいこれはあなたが向うの音楽を覚えなければいけなかったですよね。」
≪そうですね少し向うの音楽も勉強しましたし。お互いにオリジナル曲も書いて。今かけていただいたのは僕が書いた曲なんですけども≫
「ええ!!すごい!!。でもあんなふうにこの三味線とヴァイオリンがあいますよね。お互いがけされないで両方のいいところが出るような感じでね。あらコンサート行きたかった。このCDも出るんですって」
≪そうですね6月5日に発売されます。≫
「それにしても津軽の人たちが雪の中で弾いていたものがこういう風に世界的な人たちと一緒にできる楽器になったというのはね」
≪そうですね≫
「うれしいですよね」
≪うれしいです≫
「私も音楽家の家に生まれましたものですからこういう素晴らしいものを聞くとワクワクして勇気が出ますね元気にもなりますしね。ありがとうございました」
≪どうもありがとうございました≫
「ご成功を祈ってます」