2002年6月14日
黒柳「本当にお久しぶりでした。でもこの前来て頂いた時は2年ぐらい前でしたか。お孫さんがお出来になったということで”おめでとうございます”と申し上げようと思ったらおばあさんになったといわれるのが嫌なんだって?」
ロザンナ≪いや、実感が無いんですよね。何て言わせようというのが凄い問題で孫は孫に違いないんだけども孫という言葉が凄好きじゃない≫
「バーバーとかそんな風に呼ばせようとか」
≪絶対ない≫
「ロザンナちゃんって呼ばせたら。子供はそういう風に覚えんのよ。」
≪ロージーって呼ばせようかと思って。私のニックネームはロージーだから。でも小さい子は”オジ”っていうだろうからおじさんに見られるかも(笑顔)≫
※家族写真が登場。着物を着て孫を抱いているロザンナさん
「これが皆さんねえ生まれたばっかりなのにこんなにお人形さんみたいに。」
≪本当に可愛い≫
「ご長男も27ですって?」
≪27です≫
「あの時あんなに小さかったのにもう13回忌が来るという事でしょう。右がアイちゃんという(長男の)お嫁さんです。後ろに立っているのが」
≪次男と長女≫
「次男のシモン君が・・・」
≪いやライモンですね。24歳になります≫
「できれいなお嬢さんが」
≪マリオン20です≫
「だからあの時はマリオンちゃんは小さかったのね。小学生の」
≪3年生になったばっかり≫
「だけどあなたがあんなに辛い思いをなさって13回忌になるというと子供が大きくなって」
≪もう大丈夫ですね。≫
「でもあなたは長いこと悲しそうでしたからね。」
≪これはどうにもならないですね≫
「それとこのあなたがお召しになっているグリーンの着物、本当はアイちゃんに着てもらおうと」
≪これはシモンのお宮参りのときにきた着物≫
「この着物を着てもらおうと思ったらあいちゃんはあいちゃんで」
≪お婆ちゃまの19歳の時の着物を≫
「長男のお嫁さんのあいちゃんのお婆様が19歳の時のお着物なんですってね。でもこうゆうのをするたんびにヒデが生きてたらって思います?」
≪思うんですけども生きてたらこうゆう場面(長男の結婚)がまだ無かったかもしれない。22歳で長男は結婚しましたからパパが生きていたら冗談じゃないよ、まだ早いって言ってたかもしれない。≫
「ただ長男のシモン君が結婚しようと思うと22の時に言って結婚しようと思うと言った日にちが」
≪これは父さんの子だなと思ったのは普通は22で仕事も安定してない状態で結婚したいといったらばだれだって反対するじゃないですか。結婚しようと思うって言った時「ええ!!いつごろ」って言ったら「6月の17日にしたい」って言うの。4月の終わりごろに。「お前さあ6月17日って何の日か知ってんのか?」って6月17日ってパパの死んだ日なのね。「僕はさあこの6月17日っていうのはずっと悲しい嫌な日って思ってたけども、結婚して良い日に変えたい」って言われたらやられたね≫
「悲しい日ではあるけども長男の結婚式の日なんだから結婚記念日で彼はきっと考えたんでしょう。その時子供でもできたのかなっと思ったらいきなり結婚したいってねえ」
≪結婚したいって言うから「あれ!!」と思ったんだけども全然そうじゃない≫
「あいちゃんという人も割りとヒョロッとしてるそうなんですけどもすぐに生まれたそうなんですけども、その(孫が)生まれる前の日かなんかに一緒に散歩してたんですって?」
※ロザンナさんと娘さんと長男の奥さんと3人で散歩をした
≪娘と3人で歩いていて普通(妊娠していて)お腹が重いからゆっくり歩くのにスタスタと歩いて。今日さあラーメンでも食べに行こうと近くのラーメン屋さんに連れて行ったらズルズルズルって食べちゃって帰りもスタスタ帰っちゃうの。もうちょっとゆっくり歩きなさいって言ったら「大丈夫明日出すから!!」って(笑)≫
「予定日はまだ先だったんでしょ」
≪そう1週間ぐらい先だったんです。本当に出しちゃった(出産した)んですよ≫
「それで次の日の朝方に病院に入ったんでお弁当を持っていってあげようと」
≪そうそう6時半ぐらいに病院にいったんで、初めての子供だから私も経験あるけどもすぐに生まれるなんて夢みたいな事はないと思うけども8時ごろになったからおにぎりでも持っていってあげようと、娘とまさか病院に入ったら「(子供が生まれて)おめでとうございます」なんてことになったらって冗談を言ってたら「おめでとうございます。とっても楽なお産で」って。ハッと見たら息子が赤ちゃんを抱いて。なんだか緊張するまもなく心配するまもなく居たんですよ≫
「その赤ちゃんがどうしたことかイタリア式に泣くんだって?」
≪あの手のつかいかたがダイナミックなんですよ。あれは多分遺伝子。4ヶ月ぐらいの時に興奮すると手が上がって。≫
「でも本当に可愛くて、上手に赤ちゃんのお人形を作る人が居るけどもその赤ちゃんのお人形みたいに可愛いわね。」
≪(家族写真を撮る時に)私達がしたくをしていた時は寝ていたんですよでも写真を撮る時はパチッと目をあけて。私は3人子供がいるんですよ。日本で言うハーフに当たるんですがこの子(孫)はクウォーター(4分の1)になるのに真っ白で本当にイタリアの血が濃いみたいですね。かわいいですよ≫
「自分の子だったらないててもその辺に置いとけばいいけども孫だったら心配で」
≪どうしていいか心臓がキューンとなっちゃうんですよ。自分の子供だったらちょっと泣かしてもほっといてもいいかなって。分かるじゃないですか。ゲボ吐いても死にはしないとおもうけどもこの子がやると死んじゃうんじゃないかって思って≫
「しょっちゅう会ってるの?」
≪結構しょっちゅう会ってる。会うたびに大きくなってるし、会うたびに表情が変わってるし。3ヶ月まで一緒に住んでたんですけども≫
「別れは辛いけどもたまに会えれば」
≪そうそうそう。昨日娘にあいちゃんから電話があってやっとパパ・ママが言えるようになったって≫
「え!!もうそんなになったの。何ヶ月?」
≪7ヶ月になったんです。≫
「7ヶ月で普通パパママ何て言わないわよ、あなた」
≪あらうちの子天才かしら。≫
「(会場に向かって聞く)普通言いませんよね。ほら言わないって」
≪おしゃべりになるかもね。この2週間ぐらい前に家に預けられてた時は・・≫
「あいちゃんはパーカッションニストなんですよね。お仕事に行く時は預けていくの」
≪預けられた時に眠くなった時に「んーんー」ってママを探しているのがあったんですけどもそれがママって言うようになっちゃったの≫
「イタリア語教えたら。話は変わるけども」
≪いったんですよ、私はこの子にはイタリア語でしかしゃべらないからねって。でもすぐに日本語でしゃべっちゃう(会場笑)≫
「イタリア語でしゃべった方がいいと思うわ。子供だったらバイリンガルすぐなんだから。」
≪内の子供たちにイタリア語を話さなかったのはパパがしゃべれなかったから。なにか秘密をしゃべってると取られるのは嫌だったから。でもなんでイタリア語を教えてくれなかったのって子供に叱られたんですよ大きくなってから。だからこの子には教えようかなって≫
「絶対そうよ。子供なんてすぐに覚えるから。さて今だから話せるんですけどもコマーシャルを挟みまして彼が亡くなって納骨式で悲しみにくれてる時に親友の男の人がおっしゃった一言が」
≪はらわたが煮えくり返る≫
「こんな事があるんだなって。コマーシャルを挟みましてこのお話」
≪(うなずく)≫
黒柳「悲しい悲しいヒデの納骨式が終った後に」
ロザンナ≪暑い日だった。8月の初めで熱いあそこに置いとくのが辛くてね。彼の親友とか親戚とかとお茶を飲んでいて彼の思い出話をしていて。そこにすごく遅れて外国からきた人が来てこの人は親友を通り越して本当に縁の深い人で、お酒を飲んでるうちに話がとんでもない方向へいっちゃいまして「さあお前もがんばれよ。これからは女として生きなさいよ」って。なんでこういう時にこういう話をするのかなって。「ヒデだって好き放題やって俺は大変だったんだから」、ハッ?てなにそれって≫
「彼の日本のお友達ね。親友が」
≪つまり彼が入院している時も病院に来ていた女性がいてそれも若い子で面倒も見てると。もうねえ≫
「そう言われてみればその親友というい人が来ている時に限って」
≪(ヒデさんが)早く帰っていいよっていうんですよ≫
「その時はなんとも思わなかった?」
≪いや私も子供がいるから早くに帰ってあげたいけども「もう帰るのかって」悲しそうに言うから、でもねえ月に何回か今日は彼が来るから早く帰っていいよって。それが後で考えてみると全部ツジツ・・・≫
「つじつまがあう。」
≪そしたらここに飾ってあった彼の写真をぶん殴って蹴っ飛ばしたんですよ。≫
「ようするにあなたが帰ったあとにその親友という人が間に入って彼に」
≪あわしてたんです。≫
「死んじゃった後だからね」
≪生きてれば殴りあいでもすればどうにかなるけども。何もこんな日にそんな事を言わなくても自分(親友)の胸に閉まっておけばわからないじゃないって思ったんですよ。その人は名前も聞きたくないし、2度と会いたくないと思ったんですよ。でもその一言のお陰で私は生き直すことができたんですよ≫
「それはどういうことで?」
≪私はヒデのことしかなくてずっとヒデだけを見ながら生きてきたのに彼が生きてるうちにこれだけの事を私にしてたんだったら私ももう1回女として生きてみようじゃないかという開き直りみたいなのができたんですよ。それでミニスカートを履きネイルサロンへ行き「ヨッシャー」って。まあたいしたロマンスも無かったんだけども気持ちはね≫
「その”なにくそ”って子供たちと生きていくぞって気持ちが湧いたのは、1回イタリアにお帰りになったじゃない傷心の旅とか言って。そのままイタリアのお父さんのところに帰っちゃおうかと思ったんだけども」
≪そうそうそう。こんな若い木を引き抜いてしまったらちゃんと土に根をおろせるか考えて行動したほうがいいよって言われて”グサ”ですよね。お父さんは喜んで帰っておいでって言ってくれるのかと思ったら。親っていうのはそういうものなのかなって帰って欲しくても孫のため、子供のために我慢するのが親なのかなって思って≫
「違うとこの土地に植えたら上手に育つか分からないというのはお上手な例えですよね」
≪いや家のお父さんっ(ロザンナさんのお父さん)て本を読んだりテレビドラマを見たりする人じゃないんですよ。根っからある心から出てきた言葉だったからちょっと素敵な人だなってちょっと見直したんですよ≫
「17歳の時に日本にいらして18歳の時に彼に会ってもうヒデしかいないていう生活だったんですから。結婚はどのくらいしてらしたんですか?」
≪結婚は15年です≫
「ああそう2人で歌ってる時間が長かったからね。」
≪全部で22年くらいで≫
「ヒデとロザンナっの歌は本当に良かったんで一緒にいたのは22年だったんだけども、日本に来てよしやってらるぞって他所の国の人が日本でやるのはね。でもみんなあなたに親切だったんじゃないんですか?」
≪いやあどこに行っても温かく迎えてくれるし、何も出来ない私でも1つ褒められる事を見つけてはそれだけしか言ってくれないし本当に日本に残っていて良かったと思います≫
「その親友という人もお酒を飲んだからってそんなことを言っちゃうっていうのもどうかと思うんだけども逆にいえばそれが」
≪いや多分彼(親友)の私に対する思いやりだと思います。今考えれば。がんばれよって。私の性質を知っているからこの人はこのまま家の中に閉じこもって死んじゃうんじゃないかって思ったから彼(ヒデ)だってこうだったんだからお前だってもう一度がんばれっていうメッセージだったんでしょ。でもタイミングが悪くてそういうところで言われちゃったから≫
「それはねえ」
≪でも2,3年家に閉じこもってから聞くのよりは良かったかもしれないです。≫
「でもそれからがんばって今講演のお仕事とかずいぶん」
≪歌もチョコチョコしてます≫
「そうですってねえ。あなたの事を好きな人がいるってことが良かったですねえ」
≪良かったです≫
「日本にて心細い事もあったと思うけどもヒデと一緒にいて教えてもらった事もあったでしょ?」
≪親が教えてくれた事が半分だったら彼が教えてくれた事も半分かもしれません。≫
「明治の男の人みたいだったでしょ」
≪そうそう。お母さん明治時代の人だから≫
「そういうことでは日本の色々な仕来たりだとかヒデが教えてくれたと思いますからね。でもお元気そうで」
≪私ね年取ったら暗くなるだけの人生かなって思ってたのね。でも50の声を聞いて年を取るってこんなに楽しい事って思うようになったんです。孫が生まれたって言うのもあるんですけども年を取らないとそういう幸せって味わえないじゃないですか。赤ちゃんが生まれたのもそうだし気持ちがすごく穏やかになったような気がする。40代のときは女なのか年寄りなのかなんなのかわかんない。今50代で550代は50代で輝ける歳だなって≫
「今日本も”50代からの輝ける女達”っていうグループがあるぐらいですからね」
≪健康だけ保てば130まで≫
「いきますか(笑)」
≪ハハハ(笑)≫
黒柳「でもヒデが手術だなんだって病院に入っている時にお金が段々無くなってきて、芸能人ってお金を持ってると思ってますけどもみなさん持ってないのね」
ロザンナ≪入るけども使っちゃうんですよね≫
「そうなんですよね使う事があってどんどんお金がなくなっていって仕方がないから彼の車を売ろうかって」
≪売っちゃたんですよ≫
「息子に相談してでしょ」
≪息子は小さかったからね。まだ14でしたからね。≫
「でどうしようかって言ったらいいじゃないと。その車は売っちゃたんだけどヒデのほうは自分が良くなると思ってるから」
≪そうそうそう。たまにエンジンかけてくれよとか、風とおしてくれよとか。エンジンかけてあげないとエンジンだめになるからとか言って。いつも嘘ついてるからグサってなるのよ≫
「そうよね。」
≪2,3年前までは夢に出てくるんですよ。いきなり帰ってきて車がない。どうしよって(笑)≫
「そこはつらいわね。私いつまでも忘れられないんだけども(黒柳さんの)免許証が切れちゃって普通は(更新が)警察署でできるのに遠い大森の先のほうまで行かなくてはいけなくなってそこで写真を写したりして待ってたの。そこに男の人が点滴をつけて座ってたのね。そしたらその人の奥さんの人と隣り合わせになったのね。「ご主人ですか?」って言ったら「そうなんです」って言うのね。「あの人(点滴をつけた男の人)病院で長くないって言われてるのに免許証が切れたら嫌だからって言って今日来るって言うのよ」って言うんですよ。本当に辛いだろうなって思うのよ。「あの人に後でもいいじゃないって言ったのに切れたら面倒だからって」。「ああそうですか。でも良くなるかもしれませんよ」って言ったんだけどもそれが分かって来てる奥さんて辛いだろうなって思って忘れられないんですけども。(ヒデさんの)ジャガーを売ってしまったんだけど、(病気が)治って帰ってきたらうれしいんだけどもどうしようって」
≪そういう時はそういうときで話し合えば私が贅沢するために売ったんじゃないって言えば分かってもらえるだろうし≫
「2人で話してたのよねヒデが中野サンプラザで歌ってるのを見ててね。最後の舞台みたいになったんだけども坂本九さんのヒット曲をいろんな歌手の方が歌ったの。その時にハンサムでね」
≪かっこよかった≫
「オールバックでね。前からオールバックにしてたら良かったのにあの時が最初のオールバックでね。2人で見ててねいい男ねって。その時くらいから悪くなっていった」
≪ちょうど亡くなる前の年でしたね。≫
「10月ぐらいでしたかね」
≪10月ぐらいから急にお腹が痛いって言い出したんです≫
「そのちょっと後ぐらいで一番ハンサムな時でしたのにね」
≪そうそうそう≫
黒柳「まあお料理の本とか色々出してらっしゃるんですけども、さっきのような彼に対して言いたい事とか書いた本を今度」
ロザンナ≪はい、もうでました≫
「”天国の夫へ 13年目のラブレター”。」
≪私ねえラブレター1回しか書いてなくて、彼が入院している時に。その時嘘ばっかしなんですよ。いなくなるの分かっててこれから40年一緒にいようねって。だから今度は全部本当の気持ちで叱ったり、喜んだり、泣いたり。≫
「さっきの話も、女の人の話も?」
≪そうですね≫
「そうするとまた吹っ切れるというところもあるかもしれないね」
≪(うなずく)≫
「お元気で何よりです。お孫さんもおめでとうございます」