本日の徹子の部屋ゲストは松井誠さん

2002年2月22日

黒柳「おもしろいんですね。舞台の上で女性が着物を変えるのをおみせになるんですね」

松井≪はいみせます≫

「大変なことだと思うんですけど」

≪そうですね。手がつるんですね。力が入りませんから手をたたいて帯を結んだりします。化粧をするのに手をたたいて叩いて早代わりの化粧をしたり≫

「手がつっちゃう。VTRがあるんですが大体出てらっしゃる時は客席から出てらっしゃる」

≪そうですね。毎日毎日場数を踏んでおりますからこういう裏方のことを舞台で表現しながら皆さんに見せるということは考えたんですけどなんとかレビューの中でショー仕立てでみなさんに見せる作り方は無いかと考えて考えて≫

「一座をもってらっしゃるんですけど何と言う劇団?」

≪”誠”といいます≫

「劇団”誠”を持ってらっしゃるんですけどお小さいときから自分ほど駄目な人間はいないと思ってらっしゃったんですって」

≪中学まで自分の心を閉ざして育ったと言うところがありますよね。昔の私をご存知の方は絶対今の松井誠を想像できない位≫

「子役としては出てらっしゃらないの」

≪全然使い物にならないんですよ。下手なんです≫

「そうなの」

≪うちの父親母親がお前は役者は無理だなと幕引きだなとずっと幕引きをやってました。何の期待もされないまま育ちました≫

「そう。」

≪小さい頃は役者がすごく嫌だなと言うところがありましたよね。旅回りの生活で学校にも行けない、友達とも遊べないそういう生活の中で役者の子供だとバカにされた時期が多かったんですよ。祭り興行の中で育ちましたのでいじめられたことがたくさんありましたので心を閉ざして育ちました≫

「そうか外ではいじめられて家ではへたくそと」

≪学校では友達が出来ないんですね中学校になりますと友達を作り出すその中で1ヶ月、2ヶ月で転校転校ですからダンボールの中に隠れまして”いってまいりまーす”といって登校拒否をしました≫

「かわいそうですね。いまは座長にもなってあんなきれいな女の人にもなって日本国中を回ってらっしゃるのをみるとびっくりするんですけど上京なさって大きな劇場をご覧になった」

≪中学を卒業して家出をしたんですね。新しい自分を見つけるために家出をしましていろんな仕事をしましてそのときが一番大変なときだったんですけど泣きながら未知の世界に旅立ちますよね東京に出てまいりまして≫

「どういう仕事を」

≪水商売ですね。年齢を偽って仕事をしたんですね。本当に恐い世界ではありますけど九州に帰りたい、親元に帰りたいでもここでがんばらないと自分というものは見つけられないなと≫

「でも俳優になろうという気持ちは」

≪ないです。役者になる気持ちはないですね≫

「ところが大きな舞台をご覧になって」

≪森繁さんの舞台を見て我々の芝居というものは飲んだり食べたりアルコール見ていたり見ていなかったりというそういう状況の中で芝居をしていたんですね舞台がそういうものだと思ってたんですね。大きな森繁さんの舞台を見て”ああ!!誰も飲み食いしていない”≫

「みんな舞台を見ている」

≪誰も会話していない泣いたり笑ったり舞台に集中している姿を見てこれが自分が求める役者像だなということを感じましてそれを目指して目指して1からがんばりました≫

「みんなが集中してくれるんだったらこういうんだったらやりたいと」

≪いまになって旅回りの生活楽屋で生まれて誰も経験できない生活があるから今の自分があるんだと思うんですね。その頃は全然感じないんですねあの生活がなければ普通に高校にいって大学に行ってと望んだ時期がありましたけど今思うとあの大きな舞台を見まして名前を残せる役者になりたいなっと思います。≫

「そこは血でしょうとおっしゃたんですけど25歳のときに劇団をお作りになって山田五十鈴さんとも共演されてるんですけど山田さんは男性の俳優さんの何人かを養子とおっしゃってるんですけどあなたもその中の1人でいらっしゃる」

≪はい末っ子。新たに西川きよしさんの息子さんが末っ子に入られて上にあがったんですねお兄さんになりました≫

「実は今日おでになるということで山田五十鈴さんにお手紙をいただいたのでこれから読ましていただいてよろしいでしょうか

はじめてあなたの舞台を見たのは8年前サンシャイン劇場の女形キサブロウでした。芸名のとおり誠があり品位と格調のある演技に驚きました。着ている衣装の好みからハナヤギショウタロウジョウや長谷川一夫さんのお芝居を思い出しました。そのご縁から4年前帝国劇場公演のハナノウサギヤに実の息子役で共演してくださいました。いい舞台でした。しゃれで集まってくれてる”私の養子会”には西郷さんや芝くん、榎木くんや市(市村正親)ちゃん達に可愛がられてますね。3月は大阪新歌舞伎座ですね楽しみにしてます。末っ子がんばれ誠様。母 五十鈴」

≪びっくりしましたバレンタインのチョコはいただきましたけど。私にとりまして山田五十鈴さんという大きな存在奇跡みたいな出会いだと思うんですね。たとえ芸養子でも末っ子という松井誠という名前を山田五十鈴さんに恥じないように近づきたい近づきたいという思いを≫

「でも新歌舞伎座でやる”おろち”という舞台で200人斬るんですって。200人の人が斬られてまたおきてくるんじゃなくて本当に200人斬るんですってねえ。楽屋なんかないんですって」

≪そうなんです。市川雷蔵さんの”おろち”という映画の舞台化なんですが史上始まって以来の230名の出演者なんですよ。最後の立ち回りで2000人ほどが居並ぶわけですよね≫

「200人なんて人が出たことないから楽屋が全然たりない」

≪全然足りません。それとその立ち回りを1ヶ月続けるしんどさ、体がどういう状態になるのかということが経験者の方がいらっしゃらないので≫

「一回なんばの駅でプロモーションをおやりになったんですって」

≪はいやりました≫

「200人の人が切られてそこにうずくまるというのはいっぱいになっちゃいますよね」≪ねえ≫

「目黒祐樹さんとおでになる」≪はい≫

「楽しみでしょう」

≪そうですね誰も経験していないことを第一号としてやるわけですからいい作品として残していきたいですね。≫

「大きな劇場でやるということを目標として25歳で自分で劇団をお作りになったんですけど新歌舞伎座でやることでずいぶん」

≪そうですねすごいプレッシャーなんですが松井誠という役者を見るのが楽しみです。≫

「本当の生みの親であるお母様と共演もなさってる」

≪はいしてます。≫「本当の親子の役でしたか」≪はいそうですね恋人の役とかいろいろありましたけど≫

「恋人の役。女同士は?」≪してないですね≫

「でも手がきれいじゃなくて不恰好で嫌なんですって?」

≪いやなんですよ(笑)≫

「今お母様はあなたをどんな風に見てらっしゃいますか」

≪やはり幼い頃は親子という間柄ではなく一座員やはり他人がいっぱいいましたから母性愛という愛情の中で育ったことはないんですが今年を重ねてこの親があって今の自分があるんだと。うらんだ時期もありますけど今年老いた母親も見ますと一日でも長生きしていい舞台を見続けてほしいなと思います。今になってやっと分かるんです≫

「女形のときは手を器用に使ってらっしゃるんですけど自分では不恰好だと思っている」

≪そうなんです(手を前に見せて)あまり見せないんですがこう小指が両方とも曲がっているんですね日舞というのは小指と人差し指が離れてはいけないんですね≫

「はなれちゃう」

≪これをいかにしなやかにしなやかに研究して≫

「確かに離れてますね」

≪これが研究に研究を重ねて今すごい武器になるんですね。先生いないですから≫

「先生いない」

≪習ったことないですからですから自分独特の舞踊とかお芝居を作りあげていきたいなと思います≫

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