2002年3月18日
※:饒舌(じょうぜつ):よくしゃべること。またそのさま ~小学館国語大辞典より~
※:田山涼成さんは元野田秀樹「夢の遊眠社」に所属。テレビドラマや舞台で活躍中。
黒柳「本当に今芸能人の方で愛妻弁当を持ってスタジオ入りする方は珍しいと思いますけど。うれしいでしょお弁当を開けた時は」
田川≪妻は見せないんです作るところをですね。開けた時に楽しみがあるからと言って朝私は台所に入れないんです(笑)。≫
「子供の時も楽しみでしたものね。それがまだ続いてるわけですか。はっきり申しますが舞台に出てらした頃は収入が少なくて夜イカが夕食に出て・・・」
≪イカと申しましても足の方ですねゲソが出まして僕の方では寂しく思ったんですがおいしかったんです。「実(イカの胴体部分)がないな~」と思ったんです。家内の方も生活が苦しかったんでしょ明日からお弁当作るからと言うことになりましてそこでまた心痛くして収入が無いからなあ~と思って。翌日稽古場に行ってお弁当を開いたらカツが入ってたんですね≫
「(笑顔で)おいしそうなカツがね~」
≪それでまずカツから食べたらイカの実が。イカのカツだったんです≫
「お肉の代わりに」
≪昨夜(実のほうを)妻は食べないで≫
「明日お弁当に入れようと思って。足よりは実のほうがカツにし易いという事もあったでしょ。偶然なんですけど家のお掃除してたらその時のメニュー(お弁当のメニュー)が出てきたんですって?」
≪冷蔵庫の横を見たらカレンダーの裏に妻がお弁当のおかずがかぶらないようにダーと書いてあったんです。≫
「ご結婚なさって18年ですが途中からお弁当が始まって17年分書いてあった。一番最初のやつが”いか(カツ)・卵焼き・・・”毎日毎日書いてらして本当にお優しい奥様ですね。で寅さんにお出でなさった時に山田洋二監督が」
※:田山涼成さんは映画「男はつらいよ(監督:山田洋二、主演:渥美清)」に出演
≪まあ後藤久美子さんと2人だけのシーンなわけですが本番になりまして監督から「よーい」と言う言葉が出ますね。≫
「「よーいスタート」で演技を始めるわけですね」
≪で「よーい、よーい、よーい」ってちっともスタートが無いわけですね。で監督が「田山さん、顔に筋肉」て言うんです。え!顔に筋肉ってなんだろうって。で顔に力が入ってるのかなと思って笑顔になって「よーい、よーい、よーい、田山さん顔に筋肉」ってもう一回言うんですね。≫
「穏やかな方だから余計恐いですよね」
≪そうなんです。けして怒鳴ったりしませんから。でその時勉強になったのが僕らは舞台出身ですから常にアクションをおこしていてワー(手を広げて)とか特に”遊眠社”はそういうお芝居でしたから≫
「はははははははは」
≪わかりやすければ、わかりやすく。常にそうしてるわけですからその癖がまだ抜けてなかったんでしょう。≫
「シーンの度に気合が入ってたんでしょうね。映画ってものは続いていくものですからカットの度にね(気合が入っては)」
≪それが今仕事をたくさんいただくようになって現場で今僕は顔に力が入ってないだろうかっていつも思います。≫
「映像のものにおでになってからすぐでしたから良かったですね。」
≪監督は最後までおっしゃりませんでしたからでも私の中ではそういう風に理解してるんですけども。何十年芝居やってた中の僕の一番の宝というか≫
「演技をされるときは」
≪筋肉はいってないかとかつまり自然になってるか。これが難しいですよね≫
「田山さんは小さいときから児童劇団に入ってらして小さいときから演劇はやってらしたんですね」
≪あの名古屋の児童劇団のCKと言うんですが小学校6年生から≫
「”中学生日記(NHK)”になる前の”中学生時代~我ら高校生~”、”中学生群像”、”中学生日記”とあって」
※:NHKのドラマで”中学生時代”→”中学生群像”→”中学生日記”となる
≪ぼくは”中学生時代”に出てたんです。我ら高校生のときはパンチ君っていう主役をやらしていただいたんです。そこで目覚めちゃいましてお芝居にですね≫
「それで文学座に入ろうとして文学座の研究所なんかにお入りになってそれがテレビにお入りになるまでの足跡なんですけど私いいなと思うのがあなたがすごく幸せだなと思うのは奥様が素晴らしい方だというのもあるんですが兄弟すごく仲が良くて。今でも名古屋にいらっしゃるの」
※:田山さんは名古屋出身
≪全員実家の近くに住んでます≫
「あの弟さんですか家出するときいろいろ手伝ってくれて」
※:田山さんは兄・姉・弟・妹の5人兄弟(公式HPより)
≪そうです。親父が「芝居なんてするのは」って昔の人ですからまあいろいろ反対もありまして。でもどうしてもやりたくて文学座の試験を受けてみてもしすべったら止めようと思いまして。当時すごく難しかったので。でも受かっちゃいまして弟に話したら本箱と下着、布団一流れだけですけど弟が車に積んでくれまして≫
「何歳違いですか?」
≪4つ違いです。弟の車で高円寺の3畳のアパートまで≫
「名古屋から」≪はい≫
「汽車に乗らないで?」≪ええ≫
「で妹さんなんですけど」
≪僕が文学座の養成所にいって彼女が銀行に勤めて初めてボーナスもらったっていって一万円送ってくれたときには泣けたと言うかキュッとしましたね。≫
「何か食べてって一万円を送ってくれた。それでお兄様とお姉さまは結婚するときに」
※:田山さんが結婚するときに
≪どうしても私は妻と結婚したかったものですからでも何も無いんですねでも最低限のことをしなくてはと思って名古屋に行きまして親にはいえませんから兄と姉にですねちょっとお金を貸していただきたいと≫
「気持ちよく結婚するときの資金を出してくだすった。自分の出来る範囲で守り立ててくださったんでこうして俳優を続けていくことが出来たんだと思いますけどねえ」
≪そうですね≫
~CM~
黒柳「今コマーシャルの間にこの方お泣きになったんですよ「なんで涙が出るんだって」今ハンカチで涙をお拭きになったんですけどやっぱりその時のことを思い出されて」
田山≪そうですね≫
「田山さんは日活ロマンポルノにでてらしたことがあるんですけどご両親がご覧になって。ご覧になったんですねえ」
≪お袋が日の出てる間は家に帰るなと泣きながら電話の向うで≫
「ポスターかなんかで見たんですかね」
≪いやあどうも写真で。兄が見つけたみたいで。兄の同僚が見つけたみたいで「どうも涼ちゃんでてるよ」と兄に言ったみたいで≫
「ねえ東京に俳優になるって行ったのにお母様は日の出てるうちは帰ってくるなとお父様はご覧になって」
≪親父はあれほど反対したのに「あれは面白いじゃないか今度いつ出るんだ」って(会場笑)。≫
「それがおかしいでしょ。何年か経ってからあの映画面白かったなって。もうやらないのかって。でもあれでしょお母様は全然」
≪今は楽しみにしてます。でも親父は見る目があったんじゃないかって思うんですけどその映画(日活ロマンポルノ)の本を書いていた人は大河ドラマの脚本を書いたりしてますから≫
「そうですか」
≪あの頃の日活にはそういう人材がいっぱいいらっしゃたんじゃないですか≫
「まあ風間杜夫さんも出てらしたりねえ。そういうこともあったんですが文学座の研究所に入ってそれから文学座に入れるか入れないかということがあったんですが入れなくて日生劇場の裏方をやらないかっていう事になっていったらば同じ位の演技力の人が舞台に出てる。」
※:田山さんは文学座の研究所には入ったが文学座には入れなかった。その後日生劇場の裏方のバイトを始めた
≪そうなんです。私はアルバイトで俳優座大道具というところに行きましてオイティップスというお芝居をやってまして≫
「蜷川幸雄さんの」
※:舞台の演出家
≪毎日タダで見れるということでうれしくて行ったんですけどたくさんの人がでてるんです、どうしたらこういうお芝居に出れるんだろうって。≫
「大道具よりは出たほうがいいと」
≪はい。蜷川さんと毎日すれ違うわけですがお話できず落日の日に廊下の向うから蜷川さんがいらっしゃったんです。そしたら「すいません~」って声が出て蜷川さんが振り返ってくれたんです。そしたら「私はこういうもので・・・文学座で・・・・舞台に出たいんですけど・・・オーディションとか受けないと・・・・」ってワーワーとしゃべってたら蜷川さんが我が家に遊びにおいでよと言ってくださって≫
「これが人生最初の饒舌だったそうですから。とにかく今までは早くしゃべらないのに。我が家に遊びにおいでよっていい方ですね」
≪それですぐに遊びに行って次の”三文オペラ”には入れていただいたんですけど。それでその”三文オペラ”を弟が見に来たんですけど兄貴がどこに出てるかわからないといったのがショックで(笑)≫
「私も三文オペラみましたけどすごい人数ですからねえ。あの中に出てらしたんですか」
≪3つセリフをしゃべってました(笑)≫
黒柳「舞台には出たんですがいつも蜷川さんの舞台に出るわけにも行かないんで貧乏だったんでいつも大学の学食に行ってご飯を食べてらっしゃったんですね」
田山≪そうです文学座時代は上智大学。次に目白に住んでたんで学習院大学で渋谷方向に変わったときは東大の学食に(会場笑)≫
「それが縁で東大の隣の方の駒場小劇場で芝居をやっている人がいた」
≪それが”夢の遊眠社”で東大の、原型はサークルなんですがなんか大きな声出しているんでこんなこと言ったらあれなんですがアマチュアの(笑)≫
「自分は帝劇にも出たんだし」
≪で軽い気持ちでふんぞり返っていったんですが見てるうちに今まで僕がやってた劇を全部否定してるような、何も無いんですがその中に哲学が流れているような≫
「文学座とは番う」
≪(大きく首を振って)違って違って、これはなんだって!チラシを大切にもって帰って書いてあった電話番号に事務所にすぐに電話して今劇団員を募集してませんでしょうかって≫
「野田秀樹さんが劇団をやってらしたんですね」
≪電話をしましてそしたら男性が出まして「私は29歳で役者をやってまして・・・もうできあがっててそんな役者は使わないって・・・東大生でもないんで劇団に入れてもらえないかもしれないですけど・・とにかく野田氏に会いたくて」って言ったんですそしたら向うが「いや今野田はいませんから」でもそこを何とかってワーと饒舌的に話したら≫
「それが饒舌その2ですね」
≪そしたら「すみません僕が野田です」って(笑)。彼のアパートにかけてたんです≫
「あちらも貧乏だから野田さんのアパートを夢の遊眠社の事務所ということにしてたんですね」
≪あまりしゃべるから嫌になったんじゃないですかね最後に「僕が野田です」って(笑)。で今夜会いませんかって言うことになって≫
「野田さんのアパートも3畳だったんですって」
≪そうなんです。出会いに行ったら快くやりませんかと言ってくださって≫
「熱意のある人を待ってるんですかね。蜷川さんにしてもねえ。そこで長いこと夢の遊眠社にお入りになって」
≪解散まで。20代30代40代と三代に分けていたのはお前だけだなって≫
「そして饒舌その3。そこにいらしたときに客演されて」
≪”二兎(にとしゃ)”て今はかなり有名ですけどナガイアイさんと大石静さんていう方がやってらして大石さんとは前から知り合ってたものですからどうしても出てって言われたものですからでも僕はこういうきちんとした本はできないと。野田氏に傾倒してるから出来ないと言ったんですがそこをなんとかと言ってくださって≫
「起承転結のあるものは出来ませんとか言って」
≪で結局やることになってそこまで言ってくださるのならということで出演しましたところ今の家内がいまして・・・≫
※:現在の田山さんの奥様が共演者の1人だった
「そこに女優さんが。本当に一目ぼれという感じだたんですって」
≪はい≫
「でも大胆だと思うんですけどあちらがどう思ってようとも毎日毎日顔を合わして・・・時々飲みに行きませんかって誘ってらしたんでしょ」
≪全部断られました(笑)≫
「で今日が最後明日で全部終わっちゃうというときに饒舌その3」
≪あなたは女優に向いてない止めなさいと生意気なことを言ってしまい≫
「それもすごいですね初めて会った人に」
≪私の妻になったらどうだろうかって言うようなことをいって後は何を言ったかは覚えてませんけど≫
「そしたら」
≪なんとなくいい感じだったものですから≫
「すごいですね~人生で3回しか饒舌になったことは無いそうですから。普通だったら毎日舞台やっててもねえ飲みに誘われても断って「あなたは女優は向いてないから僕の妻になればいいって」そしたら結婚って。ビックリしたでしょ」
≪僕はビックリしました。で姉に結婚することになったって電話したら泣けてきまして姉も泣いて≫
「いいご兄弟ですね(笑)」
≪結婚式も僕らはやってないんですけどちょうど放送の日ですかね≫
「3月18日」
≪婚姻届を出した日なんです≫
「あらその時うれしかったでしょ~今まで何も言ってくれなかった人が結婚申し込んで”うん”と言ってくれませんよね」
≪でも「二人で作っていけたらいいねって」家内が言ったのは記憶してます≫
黒柳「なんと18年前の今日入籍なさった日でとてもうれしいそうですけど。その後夢の遊眠社にいらしたんですけどある日120万円入ってる貯金通帳を」
田山≪自分でプロデュース公演をやりたいんだけどっていったらお金がこれだけあるって渡してくれて≫
「プロデュース公演をすることでまた飛躍に繋がったんだと思うんですけど」
≪2人芝居をしまして。180度違う芝居をしまして≫
「それから段々テレビのもお出になって。”白い船”という映画に出演されて試写会で見て泣いたんですって」
≪自分の出てる映画を見て泣いたんですけど≫「ありがとうございました」