2002年4月4日
黒柳「広瀬久美子さんです。どうぞよろしくお願いします。元NHKのアナウンサーで女子アナの先鞭をつけた方でいらっしゃるんですが38年間NHKにいらっしゃいまして局次長アナウンサーというびっくりする地位までいかれた方です。じつはですね広瀬さんの声を出すねラジオなんかで車に乗っている時に聞いたりするとなんてしゃれた方だろう、そしてなんて知的で面白い方だろう。アナウンサーだとは思わなかったんですね。今日はじめてお目にかかってNHKのアナウンサーらしくないしゃべり方でNHKとしてはめずらしい」
広瀬≪私はごく普通だと思ってたんですけど皆さんからそう言われましたね何でだかよく分からないんですけど。≫
「声がしゃがれてらしゃるわけじゃないんですけど」
≪にごってたんです≫
「ちょっとかすれてるっていうか(笑)」
≪よくハスキーだとは言われましたね≫
「私はNHKのアナウンサーの方とは全然思ってなかったんです。運悪くお名前をうかがう前に切ったり入れたりしたものですから(※ラジオを切ったり入れたりする)中身だけ聞っていてたっていう変な人間だったものですから。今日のゲストの声だけを聞かされて”なんだ私がファンだった方じゃないの”って」
≪こわいですねそういう話を聞きますと。最後は「土曜サロン広瀬久美子の土曜ワイド」って言ってたんですけど男性のファンの方がすごく多くなってきたんですね。でお手紙をいただいて”声だけを聞いてるとどんな方かと思ってた。岡田まり子さんのような方かと思ってたら今日テレビで見てがっかりした”って。声だけ聞いてましたっていう人がいるとすごく緊張してドキッとします。≫
「当時としてはあれですよね女性アナウンサーというのは男性アナウンサーの隣で”うなづき係”ですよね」
≪そういう風に育ってないんですよね家でね(会場笑)。女の4人姉妹ですから≫
「あああ」
≪「若草物語」を米穀通帳を持って見にいったっていう世代ですから≫
「米穀通帳ってお米の配給ですよね。」
≪そうです≫
「どうして映画と関係あるんですか?」
≪「若草物語」って4人姉妹ですよね。ですから4人姉妹じゃなかったら無料でみせないという≫
「4人姉妹だったら無料だったんですか。あらおかしい(笑)。あれは私も見ましたけどおかしかったですね。でも米穀通帳っていうのもずいぶん古い最近聞いたことが無いような。」
≪生まれたばっかしだったものですから(笑)≫
「あのせっかくおいでいただいたので私はラジオに出てらしゃると思いたいのねラジオのリスナーの方に30秒くらいでいいんで今の心境でも話してもらえますか。ではみなさん広瀬さんですよ」
※ラジオ風に広瀬さんに語ってもらうことになった
≪皆さんこんにちは広瀬久美子です。今日はよそにお邪魔しましてですねベージュ色のとてもシックなお洋服をお召しの黒柳徹子さんのお部屋にお邪魔しております。とても華やかなお洋服をお召しだったので私も負けまいと着てきたんですけどすみません。という感じですね≫
「(拍手)なかなかねNHKのアナウンサーですぐにパッと言える方はね今まではね」
≪そうですかね。一番悩んだのはインタビューだったんですよ。インタビューしますでしょそうするとディレクターが(話す)順番を書いてくれるんです。5つぐらい。でも最初のインタビューをすると2番目の質問は出せないなって思う時があるんですよ。それを出すとなると聞いて答える聞いて答える続きが無いっていう風になるんですよ。≫
※1番目の質問と2番目の質問がまったく違う質問だと話が途切れる。最初の話はなんだったのかと思わせる
「変ですよね」
≪面白くないっていう風になるんですよ。答えてくださった方は続きで答えていただく方が多いですよね。ブツブツって切れちゃうんですよ。どうしてかなって思った時に徹子さんが≫
「私が」
≪NHKの番組だと思うんですけど”NHKのアナウンサーのかたは私の話を聞いてくださらないの”って≫
「まあ失礼なこと申しました」
≪悩んでいた時だったので”え!!”って拝聴しましたらば”きっとアナウンサーの方は次の質問を考えてらっしゃるのよね”って。なんて鋭い指摘でしょうって。というのは書いてくださったものを最初質問しますよね答えが返ってくる。で次の質問次の質問って(下に書いた紙を)見ているとお話が上を通るわけですよね。≫
「なるほどね聞いていただけないって私はそう思ったんでしょう。それで話しているのに全然違う質問が来ると今の話はどうなったんだろうってきっと思ったんでしょうね。」
≪それで私は自信を持って自分で聞こうと≫
「それでディスクジョッキーのような番組に出てらしたけど実に自然に流れにそって。この頃(30代の頃の写真が出て)はお子さんをお生みになって保育園に預ける。私は娘の命と引き換えに仕事をしているんだというすごいお気持ちだったんですって」
≪まあ預かってもらわないとできませんでしたけど、でも(子供が)おなかをこわしても休むわけにはいかないんですよね。子供が病気になんで休みますとは言えない。高熱が出たら姑もいたんで預けてはいたんですけど子供がもし亡くなったらこれはこの子の寿命だと。もし万が一のことがあったら私は後追いをしようと。≫
「すごい覚悟ですよね」
≪当時は(子供の)傍にいなければいけないという枠がありましたから。外で勤めるなんてとんでもないっていう。≫
「だから娘の命と引き換えにやっている仕事なんだからうなづきだけで帰れるものかと。私は私でやるんだと。(娘さんとの写真が出て)あなたもお母さんの顔ですね」
≪これは高校受験に受かった時の写真ですね。高校受験というのは大学と続いたところに入れたかったんですね。楽じゃないですか2度も受験しないですむし。ですが世の中のお母様は同じことを考えてらっしゃるんですね≫
「だからみんながきちゃうんでしょ。やだー」
≪もう塾の先生が(勉強を)16時間やってください。お母さんがやってくださいっていうんですよ高校受験は。左手で食べられるものを作ってください。右手は僕が作ったテキストをやってください。僕のをやっていたら受かりますって言われたんです。夏休みは朝5時に起こしてくださいって言われたんです。水風呂に入れてくださいって言われたんです目がよく覚めますって。私は5時には起きれないんで布団の中から”5時よーーー”って≫
「水風呂はいりなさいって」
≪後から言われました自分は布団の中から叫んでたって≫
「そこ(高校)にはお入りになられたんですか?」
≪入りました。しかし全身しっしんだらけでした。≫
「ストレスですか」
≪はい≫
「可哀想に。そんな大変な勉強しないとダメなところってあるんですね。でもそこにお入りになって良かったってとこあります?」
≪半年経ってからなんでもっと早く入れてくれなかった(高校からではなく中学・小学校から入れてくれなかったことについて)のって言ったんですよ。冗談じゃないわよあんな勉強が嫌いなくせにって言ったらば私学ですから下から来る人が本当に優しいんだそうです。≫
「そういう人間的な面からでも。そういう競争の中から来た人たちでも人間的にやさしくできるっていう」
≪そうですね区立は受験に失敗した人が来るっていうのともちろんそうじゃない人もいるんですが私は区立を信用していれたんですけど試験の点が良くても仲間はずれ悪くてもダメというところでみんな競争相手なんですよね≫
※広瀬さんの娘さんは中学校まで区立、高校からは私学に行かれた
「大変ですよね。お子さんはお一人?」
≪はい≫
黒柳「NHK時代に”花茣蓙(ハナゴザ)”事件というのがあった」
※花茣蓙=種々の色に染めた藺(い)で模様を織り出したござ。花むしろ。~小学館国語大辞典より~
広瀬≪あの大体NHKにいた時に男性アナウンサーと組むんですよ。やはり普通に(男性アナウンサーは)生活なさってるんですけど女のようにいろいろなことをなさいませんから建前が多いんですね。それで暑いときに男性アナウンサーが「本当に暑いですね。風鈴がなつかしいですね。花茣蓙なんかもいいんですよね」って言ったんです。私はカチンときて「あら風鈴は今騒音の原因になってますしね花茣蓙なんかそのまま足の形に汗がつくだけじゃありませんか」って≫
「へ!放送で」
≪すみません≫
「その(男性)アナウンサーはどうしてらっしゃいました」
≪黙ってました≫
「そんなとこで反論が来るとは夢にも思ってないですからね。その後に呼びつけられるとかは無かったんですか?」
≪無かったですけどそういう話のほうがメインだったんですよ。いろいろな方と仕事をしましたけど調べたことを書いてね(男性アナが)”女の方は芋栗南京がお好きだそうで”とかね。そういう一般的な話しかできなかったんですよね。私はお芋は好きじゃありませんって言いましたけどね。≫
「になみに私はサツマイモとかは大好きですけどね。芋ヨウカンなんかはしょっちゅう食べてますけどね。特に男の方のアナウンサーはそういうことがお分かりじゃないですから。そういう中にあって広瀬さんはご自分の世界を開拓されたんだと思いますけど普通のニュースとかをお読みになったことは?」
≪読んだことはあります。でも読んだらば声に性格が出て声が1本じゃないんですって。≫
「お分かりだと思いますけど高い声から低い声までずいぶんいろんな声をだしてらっしゃる。いろんな声が出るからニュースを読む時はいろんな声が出ちゃう」
≪それがねつい最近言われたんですよ。ニュース読んでいたときもあるんですけどこういうこと言うと悪いんですけど人の書いたもの読んでると退屈しちゃうていう。何か一言付け加えたくなるんでそれも良くなかったんだと思います≫
「でも本当にNHKにはめずらしいですよね。NHKはきっちとしてなくてはいけないっていう」
≪それは枠はきちっとしてましたね≫
「でもねえ私の知っているアナウンサーでねものすごく間違いが多い方がいて私よりももっと先輩の人で”タンタンタンターン”ってNHKで入るでしょその何秒間の間にねえ「税金は進んで滞納しましょう」って言って”チーン”ってなったの。もう次の番組に入って7時のニュースですから弁明のしようも無くて」
≪ははははは≫
「始末書書かせられるんですってね。税金は進んで滞納しましょうって間違ってますからねえ。そういう方もいらしたようですよ」
≪昔はねえ番組のお知らせを言ってる時にねえもう亡くなった方ですけどねえ「さっと見渡しましたけどろくな番組はございません」っていた人もいました≫
「それもすごいですね何をおっしゃろうとしたんですかね」
≪それは先輩が書いた本に書いてありましたんで≫
「麻雀やってて麻雀って東南西北(トウナンシャーペイ)って言うんでしょ。天気予報読むのに東南(トンナン)の風って。そういって始末書っていう人も」
≪始末書はないですけどね≫
黒柳「広瀬さんは元アナウンサーでいらしてるんですけど本もいろいろ書いてらっしゃて題名が面白いのね”女の器量は言葉しだい”、”お局様のひとり言”、”女の戦は果てしないく”そういうものを書いてらっしゃるんですけどご主人はNHKの方で”声比べ腕比べ子供音楽会”という番組をやってらしたんですけど職場結婚」
広瀬≪はい。玉の輿を狙ってたんですけどねえしがない職場結婚で終わってしまって。≫
結婚式の写真登場
「私ご主人の顔よく覚えていますけどご主人脳内出血におなりになったんですって。今お元気だからいいんですけど」
≪1ヶ月絶対安静で手術もしないで今は元気になりましたけど≫
「よかったですね。私もよくお仕事ご一緒したのを覚えていますけど。大体電車に乗っても何をしててもマナーの悪い人がいると我慢がならない」
≪そうですねこの間はホテルのエレベーターで言ったんですけど正面に立っている男の人がいるんです。後ろから降りる人が”すみません。すみません”って言ってるのにどかないんです。私も一声「真ん中に立つんじゃないのよ!邪魔なのよ」と≫
「その人どきました?」
≪どきました電車の中では女子高校生が真っ赤なイチゴのついたカキ氷を持って入ってきたんです。で「電車の中でそんなもの食べるんじゃないの!!誰かに付いたら困るでしょ」って言ったら「うるさいわねクソババア」って言われました。「あなたが悪いんです」って言ったらすと降りていきました。≫
「自動車の運転ですり寄ってきた人がいたから文句を言ったら車を運転してた人が「うるせえクソババア」って言ったらその人の隣に座っていた女の人に」
≪なにしろ危険な運転してたんですよ。女の人に見せようと思ってそういう運転してるんです。その人が「うるせいクソババア」って(私に向かって)言ったんです。私は「クソババアはあなたの隣に座ってるじゃないの」って言ったんです。そしたら運転してる男の人がプっと笑ってどこかに行っちゃたんです(会場笑い)≫
「男の人もそう思ってたんじゃないの。瞬間的にそういうこと言えないですもの。言ってやろうと思ってもね。さっきの女の子たちにもね「あんたもクソババアになるのよ」って言ってやればよかったのにね。でもご主人はすごく静かな方なんであなたがそういうことを言っている時には」
≪私が育ったところが千葉県市川市で千葉県というのは一番運転マナーが悪いんだそうです。車間距離が10センチぐらいで走るんですよ≫
「ああ恐い」
≪女の運転はからかわれるんですよ。そのからかわれてた時ですから夫が駒沢で車間距離が200メートルぐらい空くんですよね。で一緒になってからワアワア言いながら車に乗ったら夫が「道は混むは女房はワアワア騒ぐはやんなっちゃうな」って言われて(笑い)≫
黒柳「広瀬さんは今はお元気にやってらっしゃるんですけど19年程前に(お医者さんから)さわって大変だって言われたことがあったんですって」
広瀬≪さわって「はい、あなたはガンです」って言われまして。そこの院長さんに話しを聞きに行きましたらあなたは3年の命ですねって言われまして驚いて次の病院に行ったら「はい、あなたは2年です」って1年ずつ命が減ってったっていう。≫
「そのころ告知っていうのが割といわれてる時で」
≪アメリカはなぜ告知するのかっていうことを考えないで告知だけ取り入れたんですね。ホスピスも無ければ周りの人も知らないうちに「はい、ガンです」って告知だけですよ≫
「お嬢さんもまだ小さかったしびっくりなさったでしょ」
≪小学校6年生だったですね≫
「最後に行った病院で”何でもないです”って」
≪やっぱり患者のことを考えて病院はやって欲しいし≫
「びっくりなさったでしょー」
≪ええまあ後妻は誰にしようかって考えたくらいですし≫
「あなた本当に面白い方ですね。またいらしてください広瀬久美子さんでした」