本日の徹子の部屋ゲストは三遊亭円楽さん

2002年2月18日

黒柳「それにしても笑点は長くて今年で36年」

円楽≪この5月で丸丸36年です。≫

「私ねえ家にいる限りはずっと拝見しているんですけど何が可笑しいっていうと円楽さんが笑っているのが可笑しいんですね」

≪そうですか最初はねえ司会者が笑うなってずいぶんきたんですよ。ですがねえ可笑しければ笑うのが人の常ですからね喜怒哀楽をそのまま出したほうがいいんですよ≫

「それと平気で馬年なら馬年って。本当に馬年と思ってたんですよ。お顔が長いからなんですよね。お弟子さんが言いますよね」

≪長い長いって言いますけどそんなに長くはないんですよ。大体外人は長いですよね。ゲーリークーパーが一番長いですね33センチ。続いてグレゴリーペックが32センチ、ジョン・ウェインが31センチ。それで私は28センチなんです。≫

「それは誰がはかったんですか」

≪私がクーパーの写真をひきまして縮小して測りました。≫

「でもすごいですね円楽さんより5センチ長いってどんなに長いんですか。クーパーって言う人は”モロッコ”とか深刻な映画が多いんですけど喜劇が上手いんですね。へえー円楽さんより5センチ長いじゃ円楽さんのこと馬だなんて失礼ですよね」

≪なんといわれようと人が思ったんだから≫

「視聴率が悪くなったら止めようとか言ってるんですけどいまだに視聴率がいいんですね」

≪何でこんなに長々と皆さんごひいきにして見てくださるんだろうと思ったら私たちが売り出した世代が同じ世代だったんですねその方が今リタイアしているでしょう。自分が知らないやつだったら面白くないです自分が知っているやつがまだでてる。空港やなんかでね若い10代の女の子がねえ来るんですよサインを貰いに。不思議に思ってあなた私のことが好きなんですかって聞いたら”いや、おばあちゃんが好きなんです”。少なくともお母さんぐらいいってください≫

「すごくファン層が広いと言えますよね」

≪今若い人がスタジオで楽しく騒いでるでしょうあれを見て何が面白いのだかわからないとおっしゃる。あの番組は落ち着いて見てられると。≫

「笑点はウィットがいいし、みんな仲がいいんだなって仲が悪かったら悪口なんていえないし」

≪でもねえ本当に嫌いな場合もあるんですよ。そりゃねえ男同士の確執ってすごいものがありますから≫

「それにしても健康そうなんですけど突然腎臓を患って」

≪子供の頃戦争中ですが腎臓をやってるんですよその頃はいいかげんなもので大丈夫って医者にいわれまして漢方薬で止めたんですよ。でテレビで忙しくなると収録が始まるって言うと頭が痛くなるんですよ。のべつくまなく頭痛薬を飲んでました。そんなものが悪くしたんですね、。お医者さんには止めろって言われてたんです。それが止められないんですね番組を不機嫌に出ちゃいけないっていうんで飲んじゃう。そういうのが重なって駄目になっちゃった。透析をして≫

「透析って一回が長いんですね」

≪4時間。≫

「全部入れ替えるんでしょ」

≪血を。しかも月水金と3回。でお医者さんが透析するしかないとでもあっしは仕事がありますからねっていうと死にますよと≫

「そんなに悪かった」

≪朝起きたら右目が開かないんですよ。つまりね水分が出ないんですよ。汗にもなんないお小水にもなんないそうするとむくんじゃうんですね。1週間たたないうちに終わりですねと選択の道は1つしかありません。それじゃあお医者さんの言うことに任してやってるんですけどねえ。でついでにねえ他も見てもらったんですよ私の家系はガン系統なんですよ親父もお袋も長男も・・・。見てもらいましたら胃に7つポリープがある≫

「あら」

≪口から入れて焼いちゃうんですねポリープを。痛くもかゆくもない≫

「大丈夫に」

≪ええ。だけど透析ばかりは食べ物が大変です≫

「どういうものが」

≪生ものは全部いけない。お刺身はねえもし食べるんだったら醤油をつけずに2つぐらい≫

「おすしも駄目?」

≪駄目駄目。≫「果物も駄目?」

≪駄目。果物は残らず駄目。もし食べたかったら缶詰の果物をちょいと食べると。≫

「そんなに駄目なんですか野菜は?」

≪野菜は駄目。みんな水に3時間ぐらいつけてカリウムを取るんですよそしてお湯で≫

「そうするとビンラディンはあの人は透析やんないとってみんな言ってるんですけど」

≪うそでしょう。そんなことやってたら生きてないでしょう≫

「そうするとデマ」

≪栄養士さんから聞いたら絶望的になりますよ≫

「でも笑ってらっしゃるからいいですかねえ。コマーシャル」

「しかも円楽さんは悲しいことに若い頃は甘いものが好きだったのに50を過ぎてからお塩が好きになったんですってねえ。何年前から透析を?」

≪3年になりますか≫

「そんなにもお塩も甘いのも駄目っていうと味気ないですねえ」

≪まさにまさに味気ない。だけどねえ食べるものに執着しないほうなんですよ。だからまあまあ大丈夫ですよ。死なない程度に食べられるんだから。≫

「納豆を食べるのにもお醤油を入れちゃいけないっていうんですかね」

≪納豆はとんでもない。大豆がいけない。納豆大好物なんですがいけない≫

「じゃあお豆腐は」≪あれは駄目豆ですから≫

「豆がいけない」

≪だから豆腐なら湯豆腐にして醤油つけずに食べる。荻生徂徠みたいです≫

「腎臓ってそんなに大変なんですか。じゃあ煮た野菜で味付けのないものならいいんですか」

≪いいんです≫

「でもお元気ですね」

≪元気です。透析しててもわあわあわあわあ1人入りだけはしゃいでるんです≫

「でもお家がお寺で人の生き死ににしょっちゅうふれてらっしゃったということがあるんですかね」

≪そうですね。死というものの観念が皆さんとちょっと違うんじゃないですかね≫

「スケロク寺というお寺の9人兄弟の4男坊でいらっしゃるんですがお父様が亡くなられたときの話ですごい亡くなり方で」

≪先のことを考えるとか後々のことを考えるとか世の中をおさらばするんだからしょうがないんだと。お呼びがかかったら素直に車に乗りなさいと。というのも透析している最中に血圧が下がったんですよ上が80、下が20ですかするとフウーとして眠くなるんですよ。寝ちゃったんですよ。ふと気付くと周りでワアワアワアワア騒いでるんですよ増血剤注射したり点滴やったり大変なんですよ血圧上げるのにね。で聞いたらねあの瞬間てのはほとんど死んでるんですってですから手術するとき血圧みんな心配するでしょうそれなんですよ。でまた100に戻って100こえると血の気がさしてくるんですよ≫

「あご自分もそれで」

≪気が付いて。求めて死んじゃいけませんよでもなくなるときはこういうものかとスーっといって恐いも何もないんですよ。走馬灯のようによみがえるとかいいますでしょうあんなの嘘です。走馬灯も何も考える力がなくなるんですからだから楽なもんだなっと死なんてそんなに恐れることはないと≫

「お父さんはお迎えが来るとおっしゃってお経を口ずさみになったらすっと亡くなられて」

≪そう。本当にそういうものです≫

「でもお父様はお寺の住職でいらしてしゃれた方でお遊びは全部お父様から教わった」

≪ええ元々親父もお寺を継ぐ気はなかったそうなんです。相次いで亡くなっちゃってしょうがなく継いだんです。浅草なんて土地柄わねえ後日親父と一緒に熱海に行ったときは芸者さんが踊りましょうよって西洋ダンスはずっとうまいんです≫

「ソシアルダンス」

≪お父さんのほうがいいわってみんな向うへいっちゃう。それぐらいうまかったですね。碁は打つ、マージャンはやるなんでもかんでも≫

「歴史も詳しくて。いつ昔の方って勉強なさったんでしょうね。」

≪それで僕がびっくりしたのはねえ歴史や故事に詳しいのは誰でもありますけど戦後進駐軍が来たでしょそのときに何か手土産でも持っていかなくちゃ駄目だってハスや大根やらを持っていったんです。そんでベラベラしゃべってんですそんでコンビーフやらお土産もらって帰ってきてんです。そしたら言い草がいいですね”あいつら南部かテキサスの奴らだな。なまりがひどくて駄目だって”。≫

「ええ」

≪俺のはちゃんとした英語だってやつらとは違うって。だから明治の連中ってのはちゃんと学問してんですね≫

「それは私たちは知らなかったから昔の人は知ってんだなぐらいしか思ってないけど」

≪いわないんですよ勉強のことは。遊んでることは言いますけど≫

「(円楽さんが)結核なさって寝てらしてお父様が陰気くさいとおっしゃって太宰治だ芥川龍之介だ」

≪太宰だって病気しているときはそういうものに惹かれるんですねそうすると”自殺したやつの本なんか読むな!!”って寄席でも行って笑ってこい。西部劇かミュージカルでも行ってこいって。とにかく深刻なものは見るなって。そんな調子ですよ≫

「それで寄席へいらしておもしろいと」

≪うん。体悪くしなきゃ噺家になってないですね≫「運命って」

≪運命って不思議なもんですよ≫

「旅をずいぶんしてらして落語の旅が多い」

≪みなさんねえ東京に団体で出てきてねえ費用がかかるでしょう1人で行けばいいんですから。文化をみんな求めてますから。日本全国津々浦々までは行かないですけど津々まではねえ≫

「明治から芸人来たことないというような所まで」

≪よく言われます。昔永六輔さんと松山のホテルでばったりと会って”いやあおどろいたこんな四国の島には所は僕しか来ないでしょ”ってえばったらいやあ円楽さんが来ましたって(笑)≫

「ええー。」

≪あなたはどこ行っても私の先々でいわれる≫

「いいですね。お体を大事になさってください」

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