本日の徹子の部屋ゲストは坂本龍一さん

2002年5月8日

黒柳「音楽家で世界的に活躍されている坂本龍一さんなんですけども(ベルナルド)ベルトルーチ監督がこちらにいらっしゃいました」

※ベルトルーチ監督=映画監督。作品には”ラストエンペラー”、”リトルブッタ”などあり。坂本さんの音楽を多く使う。ベルトリッチとよく表記されるが以前番組に出演された時にベルトルーチと伸ばすと言われたのでこう発音されています

坂本≪そうですってね≫

「シェルタリングスカイを作られた時にちょうどいらしてて。そしてねみんながベルトルッチとみんながよく言ってたんですけども私にねイタリア人の友達がいたんで「ベルトルッチ監督が(番組に)来るんだけど」って言ったら「ベルトルッチって誰?」っていうの。「知らないの!!”ラストエンペラー”作った人よ」って言ったら友達が「ベルトルーチって言うのよ」て。(友達が)ルーチって伸ばすのって言って。(番組で監督がゲストに来られた時に)「ベルトルーチさんです」って言ったら国を出て初めてベルトルーチと呼ばれたと」

≪あのねえベルトリッチって書く人がいるのね。それが定着しちゃってそれを本人が喜んでね(笑)。日本だけだって≫

「国を出て初めて本名を呼ばれたって言ってましたけども。ラストエンペラーであのかたは凄く有名におなりになったしあなたは音楽を担当されて、甘粕大尉としてもご出演になったんだけどあの時の撮影凄かったんですってねえ?」

※坂本さんは”ラストエンペラー”で日本人将校を演じた

≪凄かったですね。撮影自体は中国とイタリアで6ヶ月ぐらい続いたんですけども僕はその間の2ヶ月ぐらいしか参加していませんがエピソードはいろいろあります。イタリア人クルー(撮影スタッフ)と中国人クルーが半々ぐらいいたんですが毎週ワインとパスタと水をイタリアから空輸してたんです(笑)。それがないと生きていけないってね(笑)≫

「やはり食べ物に関してはね」

≪食の文化というとイタリアと中国は2大食文化じゃないですか。イタリア人は食べるのに(中国人は)イタリア料理を食べないんですよ。ちゃんと中国のものを出してくれって反乱がおきましてね(笑)パスタはいやだって≫

「中国の兵隊さんでも暖かい中国料理じゃないとダメだって作ってたから戦争に負けたっていう話もあるぐらいで。それで凄いのは撮影監督でストラーノさんて言う方?」

≪ああ。アカデミー賞を3つも取ってるぐらいの天才撮影監督なんですがかれがある日3時間ぐらいかかって非常に凝ったライティングをしてたんですよ。≫

「ラクダとかもたくさん」

≪ラクダは25頭ぐらい馬は30頭ぐらい人は400人ぐらい。全員衣装着て待ってて僕もひげをつけて待ってるんですよ。で監督を呼んでこようということになって監督が来まして、見て「ダメだ!!全部やり直し」って言って怒って帰っちゃたんですね。また3時間ぐらいかかってやり直したんだけどもその日は時間切れでダメでエキストラさんもみんな返して。プロデューサーのイギリス人のジェフリー・トーマスっていうのがいるんですが彼が「今日一日で1億円なくなった」って言って中国の長春から翌日慌ててニューヨークの投資家のところに飛んでったっていう(笑)≫

「お金のことは考えない。昔の監督みたいですね」

≪とても芸術家的な。≫

「でもベルトルーチ監督は”ラストエンペラー”が初めてだったけどもその後に”リトルブッダ”」

≪”ラストエンペラー”で初めて仕事してその次に”シェルタリングスカイ”で3作目に”リトルブッダ”で一緒に仕事しました≫

「それと”スネークアイズ”っていう」

≪あれはブライアン・デパルマっていう監督の≫

「私見ましたけどもあれも坂本さんなんですよね」

≪実はそのブライアン・デパルマの新作”ファンファタール”でも僕が仕事(音楽を担当)してまして日本では冬に公開されるんじゃないですか≫

「音楽を作る時は全部出来上がったものを見てやれるわけじゃないでしょ」

≪それは理想なんですけども映画って言うのはたくさん撮って細かく編集してそれが膨大な時間がかかるわけですよね。その間に音楽も同時に進行しているので特にベルトルッチの場合は毎日のように映画が変わってしまうんですね≫

「はーー」

≪で毎日ビデオを送ってくれるんですね。新しい編集だって言って(笑)。今日の映画には合ってないんで毎日のように(音楽を)作り変えなければいけないんです(笑)≫

※毎日新しく編集しなおされたビデオが送られてくるのでそれにあわせて音楽も作り変えなければいけなかった

「ああーそう」

≪それが2,3ヶ月続くんですよ。凄く辛かったですね(笑)≫

「それとベルトルーチさんが世界中の人を泣かすようなのを作ってくれって」

≪それはリトルブッダの最後の方の音楽で・・・あの・・・あの人はこの番組出てもジョークばっかし言ってませんでした?≫

「結構言ってました」

≪いつもジョークを言ってるんですけどもね。とにかく世界中の人を泣かしたいんだって。俺はティッシュペーパーの会社を始めるからこれ以上に悲しいというものはないという音楽を作れと。(1作目、2作目と)作ってダメで3作目ぐらいで凄いのができたって電話したんです。(ベルトルッチが)聞いて「・・・・・悲しすぎる」って(笑)これじゃあ希望がないって。そんな話してないじゃないかって反対に怒って僕が。いろいろもめてそれが(3作目が)ボツになって≫

「ボツ(却下)になったの」

≪5作目でやっとOKのものがでましてそれが映画に使われてるんですけども≫

「それはお聞きになってみてなるほどて言うものでしたか?」

≪確かにね監督が言ってることは映画のためには正しいなって≫

「その曲がアルバムに入ってんですよね」

≪悔しいからそのボツになったものを自分のアルバムの中に入れたんですね。タイトルを”スウィート・リベンジ(甘い復讐)”≫

「これがちょっと聞いていただきます~曲流れる~。」

≪確かに希望がないかもしれない≫

「希望がないかもしれないけれど・・・どこの話でしたっけ?」

≪チベット仏教の話です≫

※映画”リトルブッダ”はチベット仏教の話

「あれにはあってるような感じがしますけども」

≪でしょ(笑)≫

「監督は違うんですけども”アレクセイの泉”ってこの監督がいらしたんですけども」

※本橋成一さんのこと。徹子の部屋辞典にも収録。読んでみてください

≪ああ!≫

「本橋成一さんとおっしゃる方。あの音楽もなさったんですってねえ?」

≪ええ≫

「あれも私感動した映画でした。いい映画でしたね。チェルノブイリを扱ってるんですけども人間的なところがあってユーモラスなところがあってねえ」

≪僕たちも100年ぐらい前はああいう地についた生活をしてたと思うんですけども。そういう本来の人間の生活を描いてますよね。放射能が周りの自然を汚染しているんですけども≫

「放射能が見えないんですよね。」

≪その中にあってあの泉の水だけが全然汚染されてないんですね。≫

「すごい個性的な男の人がいてその人がいないとアレクセイさんがいないとその村はやっていけないて言う」

≪長い時間をかけて作ってますけども≫

「それでアメリカに住んでらしゃる。ニューヨークに?」

≪はい≫

黒柳「去年の9月11日のアメリカの同時テロはアメリカにとって本当にショックだったって聞いてますすけどもどうでした」

坂本≪そうですね日本の皆さんと同じだと思うんですけども事件なのか事故なのかどっちかなと言う感じで2機目が突っ込んできた時にこれは事故ではないと大変なことが起こってると。カメラをつかんで外に出てダウンタウン住んでるので比較的に近いですね2キロぐらいですか。バシャバシャと写真を撮ったりじっと肉眼で見たりしてもですね信じられない光景で町の人たちも撮ったんですがパニックしている人はいなくてね≫

「そうですか」

≪落ち着いていてやるべきことはやるという感じでね≫

「でもあの時は次はタイムズスクウェアだとかエンパイヤーステートビルだとかデマが飛んだのが恐かった」

≪あそこにいて次はどういう形で(テロが)来るだろうというのは考えましましたね。人間の想像力を超えたことでしたのでその次その次といくと本当に何でもありになってしまう。その人間性の崩壊がとても恐かったですね≫

「坂本さんは朝日新聞の”私の視点”というところに9月22日付けで”報復はしてはいけない”と”報復しないのが真の勇気だと”あとでお書きになってるんですけども。」

≪やはりNYで無実の市民がたくさん殺されてね報復として超大国のアメリカがアフガンの市民を殺すと同じになってしまいますからね。なんとしても止めたかったですね≫

「でもあの時勇気があったと思ったのはアメリカではブッシュさんの支持率が上がって(報復を)やるべきだみたいになっちゃった時でしたからね」

≪ええ一応覚悟はしましたね。NYに住んでいてああいう発言をすると言うのは。なんらかの危害を加えられるかもしれないということで幸いないんですけどもね≫

「あの時もすぐに小泉さんがブッシュさんのとこにいらしてねおっしゃるとおりですと言う風になったのでどうなることかと思いましたけどもね。偶然7月にアフガニスタンに行きましてその後でテロがあったんで、7月の時でさえ(アフガンは)大変で雨も降らないし20年間も内戦があってひどい状態の時でそこに空爆ですから支援もまったく行かないですからね。今年の2月にまた行ったりしたんですけどもひどいですね。ユニセフもがんばって空爆の下でも物を運んだんですね。12,3万人が死ぬだろうと言われてたんですけども死なないで済んだんですよ。」

≪食べ物もなくて砂を食べたりとかね≫

「そうですね。それと去年は”地雷ZEROキャンペーン”でたくさんの音楽家をお集めになって地雷撤去のためのお金を集めると。ずいぶん集まりましたよね」

※坂本さんは地雷撤去の資金を集めるために曲を作り世界中の音楽家を集めてCDを出した

≪あの僕はそういうチャリティーとかやるのも初めてだったしでも上手くいきましてたくさんの方から寄付などをいただいて。ただ地雷を撤去すると言うのは膨大なお金がかかりますね。ぼくもモザンビークにクリス・ムーンと・・・≫

「いかれたんですよね。クリス・ムーンさんも来られたんですよ」

≪一緒に行って撤去の現場を見てきましたけども本当に大変ですね。≫

「(クリスさんは)地雷撤去の専門家の方なんですよ。それなのに」

≪手と足を失いましたけども。彼の強靭な精神力に感動してこのキャンペーンを始めたようなものなんです。≫

「地雷撤去のためのお金はCDをお作りになって集まりました?」

≪だいぶあつまりました≫

「そうですか」

≪それとどういう風に使われているかということもインターネットのホームページで報告してるんです。今もやってるんですけども。≫

「1つ100円から300円ぐらいで地雷を買えちゃうというんですね埋めようとする人はね。」

≪ばら撒くのは簡単だけども取るのは大変。例えでねお米が床にこぼれちゃったと。お米を救うのは簡単だけども拾うのは大変でしょう。お母さんたち。≫

「どこに埋めたっていうのもほとんど残ってませんからね。」

≪埋めた人も覚えてませんし雨が降ると動いてしまいます。≫

「世界中に(埋まっている地雷の数は)1億1000万とかね大体。これから年に10万個掘っていっても1000年かかる」

≪また今回のアフガニスタンの空爆で不発弾が増えちゃいましたから≫

「子供にも(地雷について)教育してるんですけどもね子供向けのものもたくさんありますからね。旧ユーゴスラビアとかにいくと子供を狙ったものが凄いんですね」

≪(地雷の)デザインが可愛いものもある。チョウチョみたいな形してたりとかエンピツ見たいな形してたりとか本当に残酷ですね≫

黒柳「子供が興味を持ってさわると爆発するという。このごろはアフリカにも関心を持ってケニアに」

坂本≪そうですね。3回行ってるんですけどもね続けてね。この”エレファンティズム”といってDVDブックと称していますけどね。本ではオノヨーコさんと対談したりとか≫

※DVDブック「エレファンティズム」を発売された

※DVDはCDよりも容量が大きく映像・画像なども収録できる。ビデオテープに変わる新しい記録媒体として注目

「今人類はどこから来たのかっていう事を考えてらっしゃる?」

≪ええその東アフリカから人類が発祥したというのは確定されているんですけども。この間のテロのような人間の攻撃性というものはどこから来ているのかというね。サルから受け継いだものなのかね僕ら人類特有のものなのかっていうことをね人類発祥の地から考えてみたいと言うのがこのDVDのテーマなんですけどもね≫

「その中で坂本さんはピアノを(アフリカの)子供たちの中に持っていって」

≪マサイマラという自然の中に持っていって≫

「マサイの子供のところに行って。それはケニアからお運びになった?」

≪そうです。≫

「そしたら子供たちが弾くんですよね。はじめて子供たちはピアノを見ました」

~DVD再生~

「それとこのDVDの中に像を研究している博士に。女性?」

≪女性の研究者なんですが。像の言葉音声言語を研究してらっしゃるんです。何千という言葉の意味を1つづつ確定しているんですね。像の辞書を作っているんです≫

~像の鳴き声を聞いてみることに~

黒柳「だけどあなたは日本のテレビの前で大統領は女性がいいっておっしゃってたんですけどもあれはどういう発言だったんですか?」

坂本≪像の社会と言うのは母系社会ですね。女性の社会ですね。一番年取ったお婆さんがリーダでして。でも非常に話し合って言葉が発達してますから反対意見も出ていろんなことをディスカッションして行動をするそうです。ボスザルみたいに号令をかけてワーと戦争に行くというような社会ではなくて非常に民主的な社会で≫

「話し合いをして」

≪ええ。ですから人類のボスも女性が仕切った方がいいのではないかと。女性原理が支配した方がいいのではないかというのがテーマです≫

「なるほど。CDもお作りになられて。この中(DVDブックの音楽を収録)からですか。お嬢さんの坂本美雨さんは歌手として日本で」

≪はい、やっております≫

「共演は?」

≪どうかな≫

「また」

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