2002年5月31日
黒柳「とても独特の演技で評価されている利重剛(りじゅう ごう)さんです。映画監督でもいらっしゃいます。それでお母様は小山内(おさない)美恵子さん。(小山内さんが)金八先生を書いてらっしゃいます。24年前に金八先生を書いてらっしゃる時にこの方をよくお母様が観察なすってずいぶんあなたのあれですってねえ・・・」
利重≪そうですね僕の中学時代のエピソードとか僕の友達とかの・・・≫
「ずいぶん取材なすったそうで。どうして小山内さんて中学生のことがわかるんだろうって(思われてましたが)ちょうど頃合の息子さんがいらっしゃたんですから。でも24年ですからお母様の金八先生がついて周っている」
≪2人が親子であるって知らない人がいるので時たまそういう話をすると「えーー!!」って≫
「ああそうか。お名前も違うしね」
≪自分としては当たり前のように話すんですけども驚かれる方のほうが多いですね≫
「俳優としてもご活躍で映画「ユリイカ」におでになって、あとNHKの「やんちゃくれ」これは癖のある新聞記者」
≪はい≫
「そしてデビューはお母様の緒かお書きになった「父母の誤算」。最初の時はもう俳優になるつもりで出てらっしゃたんですか?」
≪そういうつもりは全然無くてですね高校のときから8m映画を作ってたんですよ。監督になるつもりでいたんですけども人数足りないとみんな出演するんですね。役者になろうというんじゃなくて人数が足りないから出ようということで最初からあまり緊張感はもってなかったですね。≫
「まあお母様がお書きになるものだし、同じ位の歳の子が出るから出るんだっていう感じで」
≪いろんな現場を見て見てみたいと思いましたし≫
「あなたずいぶん背がお高いんだけども昔から高かったんですか?」
≪そうですね昔からヒョロっとしてましたね。≫
「監督としてもずいぶん評価されてまして現在ベルリン映画祭に監督したものが出品されたものが2本あって今度のが正式招待されたものが3本目その話は後でしますがなんといってもお母様があなたを女で1つで育ててくださった」
≪とても強い人だと思います。≫
「お母様がいきなりあなたの耳を噛んだ」
≪イベント好きの母なんでいきなり「君ももう大人だからお別れの儀式をやろうと思う」といきなり言ってですね。何のことかわからなかったんですがいきなり抱きしめて耳を噛まれました。≫
「それは耳を噛むお母さんも珍しいですね。」
≪それをエッセーに書いてですねそれを読むとああなるほどと感動するんですが、当事者としてはただ痛いですから何をしてるんだろうお袋はと(笑)。20の時ですね≫
「ああ!もうそんなに大きくなってるの。そうかと思うとあなたと本気でプロレス」
≪子供の頃まだ10歳にならない頃ですけども遊びでプロレスごっこをやって急に押さえつけられて動けないくらいで。後で聞くと僕が大きくなると力の差が出てきて押さえつけられないので今のうちに見せ付けとこうという事だったらしいんですけども(笑)。≫
「親として子供に勝っているぞということを見せていると思うんですけども。お父様とお母様はあなたが赤ちゃんぐらいの時にお別れになってそれでお母様はあなたを連れて実家にお帰りになった。本にも書いてらっしゃるんですけどね”分かれてから子供の父親は時々玩具を一杯持って会いにきた。それしか愛情の表現のしようが無かった。でも母の私には抵抗があったからある時期まで会わないでくれと頼みました。手紙と写真を送るから。彼の条件はいつか再会するかもしれないから死んだとわ言わないでくれ。アメリカに行ってることにしといてくれ”と”それともう1つ分かれた後でも夫の悪口を周りの人に言わないようにしてくれ”と。であなたはお父様はアメリカに行ってる人だとずっと思ってた」
≪友達にもうちの親父はサンフランシスコというところで働いてるんだと自慢してましたね。≫
「でもあなたが大きくなってからお父様のプレゼントが伊勢丹だかの包みで来た」
≪そうなんですよ毎年クリスマスと誕生日に(父から)手紙とプレゼントが来るんですけども僕はほとんど覚えてないんだけども「なんでこれ伊勢丹の包みなの?」って(母に)聞いたんですね。お袋はドキッとしたらしいんですけども「伊勢丹というデパートは大きいデパートだから向う(アメリカ)にもあるんだよ」って。ああそうかって納得しました。疑いの無い子供だったんでそれをまた学校へいって自慢しちゃったりして(笑)。「伊勢丹はずごいぞ。アメリカにもあるんだ」って≫
「お父様がいなくて寂しいという事も無く?」
≪不思議と全然寂しいと思わなかったですね。後から思うと(親父と)会わないし写真も送ってこないからなぜ疑わなかったのかと思うんですけども≫
「お母さまは毎月(利重さんの)写真と手紙を(お父さんに)送るからとお約束されたみたいなんです。そうこうしてるうちにお母さまが「離婚ってわかる?」っておっしゃったの?」
≪はい。小学校を卒業する時ですねあなた離婚てわかるって。「実はお父さんと私は離婚をしています。今まで嘘をついていてすいませんでした。アメリカに住んでいるというのも嘘です。実は東京に住んでいます。」と≫
「なんかお母さまは土下座をして」
≪(うなずいて)すいませんて本当に土下座ですね。最初はどういうことかわからなかったんですが向う(父親)は会いたいといってるが会う気はあるって。それで会うことになったんですけども。さすがに小学6年生ぐらいになったら騙せないだろうなって思ったんでしょうね。それまでは感謝してますけどもお袋やお祖父さんやお祖母さんや周りの人が協力して親父の悪口を言う事もなかったしお父さんはアメリカでがんばってるからお前も立派な大人になれよと≫
「それはお幸せでしたね。」
≪家族っていうのはすごいもんだと今になって思いますね≫
「それでお父様にお会いになって」
≪はい。≫
「その時に「はじめまして」っておっしゃたんですって?」
≪今でも切ないんですけども秋葉原であったんですけども(お母さんが)「こちらがお父さんです、こちらが剛君です。じゃあ」といってお袋は行ってしまたんですけども≫
※お母さんの小山内さんは「こちらがお父さん(元の夫)、こちらが剛君です」と紹介だけして行ってしまった
「お母さんはそれで分かれちゃったの」
≪自分のお父さんだと思ってるですけども緊張しているんでしょうか「はじめまして」と言っちゃたんですね。初めてではないんですけどね僕の事抱いてるわけですから≫
「それで”は!!”っと思ったでしょう。分かってくれました?」
≪分かってくれたと思うんですけども≫
「とっても良い方だったんですって?」
≪はい。それから時々デートをしてですね。その頃からすごく映画が好きだったものですからいつも付き合ってくれてお父さんと一緒にいるといつもロードショウの映画が見れるものですからいつも3本4本と映画を見るのを付き合ってくれたものですから≫
「お父様のお住まいにいらしたこともあるんですって?」
≪一度見てみるかいとか言われて一度見にいって。男の1人暮らしの部屋でこういうところで親父は暮らしているんだなって思ってそれも切ない思い出ではありますけどね。≫
「多感な時期に見てそれをお母さまには細かくご報告はなさらなかったと思うんですけども。そこでいろんなことを感じたりなさったんでしょうね。でもお父さんとお母さんはなぜ離婚したんだろうとお思いになったでしょう?」
≪まあいろいろあるんだろうなと。僕には分からないけども≫
黒柳「高校生ぐらいになったときにお父様からお手紙が来て」
利重≪その内容はですね1人暮らしをしていて自分がいつか死ぬ時の事を想像すると。例えば突然胸が痛くなって(助けを呼ぼうと)電話まで行くがたどり着けずに死んで(死んだ事に)気付かれずに1週間も経つ。それで複雑にな気持ちになる。それで縁があって再婚したらどうかという話があるんだけどももし君が許せば再婚してもいいかという様なお手紙がきまして。そうしてくださいとお手紙を返しまして。ずっと1人でいたのも僕の事を気づかっての事なんでしょうね。≫
「思ってってくださったんでしょうね。とてもいい方だったんですね。」
≪お袋もお祖父さんもお祖母さんもみんなきちんとしてるんですね。大人としての迫力もありますし子供だってバカにしてるんじゃなくて誠意を持って接している。≫
「それからお父様はどうも結婚されたらしく、もうお会いになる事もなかったんですって?」
≪そうですね。手紙でのやり取りは何回かありましたけども≫
「お父様が結婚するならそれでいいと」
≪はい≫
「でもその時お母さまに言おうかなとかいろいろな事をお思いになったでしょ?」
≪ええっとあれは言わなかったんじゃないかな(笑)≫
「でもそういうことはあなたが俳優をやっていく上で映画監督をやっていく上で愛情の事とか別れることとかずいぶん役にたつんじゃあないですかね?」
≪役に立ちますね≫
「役に立つって本当に嫌な言葉だと思うんですけどもどんな事でも役に立つんですよね嫌な事でも辛い事でも。でも皆さんの愛情があって育ったのはなんてお幸せと思います。お祖父さんはあなたと寝てくださったんでしょう?」
≪そうです僕の”利重剛”というのは芸名なんですけどもおじいちゃんの名前が”利重(とししげ)”という名前だったんですよ。おじいちゃんの名前をもらって芸名にしてるぐらいおじいちゃんが好きで≫
「なるほど剛というのは本当のお名前なのね。」
≪そうですねまあかっこいいお祖父さんでいつも散歩に行く時はハンチングを被って「俺は曲がった事が大嫌いで、曲がったものも大嫌いなんだ」っていっていきなり人の家に入っていって物干しをなおしたりする人で≫
「ははは(笑)」
≪それである時朝方パット目が覚めたらおじいちゃんがラジオを聞きながら外を眺めているんです。で「お祖父ちゃんなんでこんなに早くに起きてるの」って聞いたら「お前のお母さんはみんあを食べさせるために一生懸命働いているから昼まで寝ているのは当たり前のことなんだ。だけど俺は今仕事をしてないから早く起きないとおてんとうさまに申し訳ないんだ。」。その言葉もカッコよかったしお袋が昼まで寝ている事をフォローしているんですね。≫
「お母さんは何で朝ごはんを作ってくれないんだとか何で僕と一緒に寝てくれないんだとか思いますものね」
≪うん(笑)やっぱり人の家のお母さんと違いますから≫
「いわばあなたが寂しくないように一緒に寝てくださってるおじい様はそれが自分にできる事だったのかもしれません。なるほど小山内さんてそういうお父様がいらっしゃたんですか。小山内さんの気風のいいところってどういうところから来てるのかと思ったら」
≪ハハハ(笑)。≫
「そういう血を引いてらっしゃるんですね」
≪そうですね≫
黒柳「なにか(利重さんが)友達とワーワー騒いでらしゃったらおじいさまが赤いちゃんちゃんこで」
利重≪そうですクリスマスですかね。小さい頃サンタクロースを見た事がありまして、まあ親戚一同で騒いでましていきなりサンタクロースが来て子供たちにプレゼントを渡して帰っていったんですけども≫
「後で考えたら赤いちゃんちゃんこで」
≪見た目は完全にサンタクロースだったんですけどね≫
「それもお母さまがやってっていったのかもしれない。お父様がいなくてもお母様がいなくても寂しくないっていうね。だからという事もあるんですけどね今一生懸命カンボジアに小学校を作る事をお母さまが一生懸命やってますよね。あなたも一緒にいらしたことあるんですって?」
≪8年ぐらい前に一緒に行きました≫
「あそこは教育を受けた人はみんな殺されましたのでねポルポトに。農民しか残らなかったという国なんでね。あなたはお若いときから8年前というとお若いですよね」
≪はい。湾岸戦争前にヨルダンの難民キャンプに行ったりとかそれがきっかけになってやれる事はたくさんあるという事でお袋はカンボジアのほうに活動するようになってきましたね。≫
「カンボジアに大きな建物を作るという事じゃなくてね読み書き算数を教える事が絶対必要なんでね。ですからそういうのを見てたんで不良になる暇は全然なかったんですって?」
≪暇は無かったですね。充実してたというか面白い事ばっかしだったですね。≫
「俳優になってね独特の演技が不思議な演技が評価されるようになっちゃうと俳優としても止めるわけには行かないというふうになるんじゃないですか?」
≪俳優はとても面白いです。やり始めた頃に亡くなられたキシダシンさんとかトノヤマタイジさんとかからとてもお世話になってああいう味のあるバイプレーヤーというのが少なくなってきているので不思議な味ということで僕みたいな俳優もこの世界に残っていかなければいけないんじゃないかなって≫
「さてこの方がお作りになった3作目の映画がベルリン映画祭の正式招待作品になったんでうれしいと思うんですね。コマーシャルを挟みたいと思います」
≪(うなずく)≫
黒柳「映画がベルリン映画祭の正式招待作品になったんですけども”クロエ”という。これは」
利重≪ふらんすの作家でボリス・ビアンという方の”うたかたの日々”という作品がありましてそれをモチーフにかなりオリジナルにしているんですけども≫
「不思議な話なんですよね」
≪二人が恋に落ちて結婚してそうすると奥さんの肺にスイレンのつぼみが取り付いてしまうんです。それが花を咲かせると死んでしまうといわれてそれを咲かさないように努力するという。≫
「永瀬正敏さんとともさかりえさんお2人が」
≪本当にとっても良かったですね。自分も俳優をやってますから人がいい芝居をするととてもうれしいですね。永瀬も本当に素直な役者なんで泣く時は本当に泣くんですよ。カットがかかっても泣くのが収まらなくてそのまま泣き続けて≫
「永瀬さんはずっと泣いてカットと言っても泣いて部屋に行っても泣いて次のシーン行ってもまだ泣いてるぐらいなんですって。」
≪本当の感情が出せるんですね≫
「これは6月に日本で公開される。ベルリンで公開されてそれもうれしいんじゃないですか?」
≪うれしいですね。たくさんの人に見てもらえて≫
「お母さまは?」
≪ついこないだ試写で。案外気に入ったみたいでした、今回のは。≫
「じゃあ前の2つはどうだったんですかね?」
≪どうだったんですかね(笑)。あんまし言わないです≫
「でもお母さまの取材を見ていると本当によく取材をなさるんですって?」
≪母の仕事を見てきたからそれは感謝してますね≫
「”クロエ”ですよろしくご覧ください」