2002年1月21日
黒柳「このお二人に平尾昌章さんが加わるとロカビリー3人男。まあその時の人気がすごいですね。客席に上がってきちゃう」
ミッキー≪あがってきちゃいますね。どうにもなんない≫
「当時はテープを投げるっていうのがあったけど束で投げる」
≪船が出るわけでもなんでもないのに誰かが投げたんだろうね≫
「そうすると若いころからのお友達ねえ」
≪そうですね≫
「10代」
≪10代≫
山下『44、5年経つねえ』
「40年以上のお付き合いとするとビックリしますね」
≪ええ平尾とはもっと古いです。ジャズ学校以来ですから≫
「そうなの」
≪1つづつ年が違うんですよ。平尾、俺、山下の順で≫
「それにしてもあの頃の曲ってアメリカの曲を歌ってたんですか」
≪そうです。でもほとんど誰も聞いてないですけど。聞こえないものキャーっていって。マイク一本しかないですから今みたいに何本かあってモニターがあってていう世界じゃないですから≫
「44年前ですよ。44年前の女の人はもっとつつましいと思うじゃないですか」
≪それを我々が変えたみたいなもんですよ≫
「パンティー投げたっていう」
≪こいつはかぶってたんだよ≫
『俺はかぶってねえよ。落ちたのをかぶして帰った女の子がいたんだよ』
「日劇なんかでロカビリーをやると十重二十重にファンが囲むんですけどそれを怒りにくる大人がいるんですって」
≪そうです。学校からバスがきて自分たちの生徒を選んでつれて帰っていくんですよ。朝7時ごろですけどねえ≫
「そんなに早くから並んでるの」
≪1回目が11時ごろだよな≫
『うん』
カーチス≪11時ごろにはみんな戻ってる≫
「あらまあ。それでおばさんたちがロカビリーなんてのは不良ですって言って回ってる」
山下『でも学校で収集がつかない子達、監視がついてる子達をジャズ喫茶で1つにまとめて喧嘩しちゃいけないよするんだったらロカビリーを聞きにおいでって僕らはまとめ役だったですよ』
「正しい道に導いてた?」
≪おまえそれはちょっと正しい答えじゃないぞ≫
「でもあなた達も10代であれだけ女の子からキャーキャーいわれたらねえ」
≪やになりました≫
「もう女の子はイヤだなって」
≪そういうことはいってないです。要するに歌を聴いてくれないって言うのと、ただ出てりゃいいのかって言うのとこっちは歌手ですから歌を聴いて欲しいというのがあるわけじゃないですか。それと相反するものがあって8回目に止めたのかな≫
『俺は16回目までやってたけど終わりまでやってたけど段々お客さんが静かになってたね。時代とともに』
「初めのころはキャーっていうのばかりでしょ。何なんですかね」
『結局発散でしょう。終戦になってジャズが解禁になって大人の人がジャズに飛びついて、でも入り込む隙が何も無かったんですよ。そこにロカビリーっていうのが出てきてここぞとばかりに若い人が飛びついたんですよ』
「ウエスタン・カーニバルに」
≪高度成長とともにガーといった≫
「落語と関係あってミッキー・カーチスさんはこのウエスタン・カーニバルやってる最中に落語をやったんですって」
≪はい。どうせ歌聴いてくれないから俺はやるのイヤだって若いからごねたんでしょうね。渡辺さんがとにかく出てよって。何でもいいから出てくれ手品でも何でもいいからって言うんで。紋付着て座布団もって”ども”≫っていって出てたんですよ≫
「そうしたらみんな聞いてました」
≪シーンとしてこれは受けたのよ。くだらない話だったんですけどねえ。その時にうちの師匠の立川談シがまだ2つ目だったんですけど見に来てて≫
「見にいらしてたんですね」
≪騒ぎがあんのが好きなんですね≫
「騒ぎがあんのが好き」
≪で昔やってたろうっていわれて6,7年前になりますかねえやんないかっていわれて≫
「あなたお名前お持ちなんですよね」
≪ミッキー亭カーチスっていう亭が入るだけなんですけど≫
「ミッキー亭カーチス。で山下敬二郎さんのほうは柳家金語楼さんのお坊ちゃんでお父様はテレビが始まると同時にジェスチャーゲームの司会をなさったり」
『まあ他界して30年過ぎたのに親父を好きだった人は俺のところに来てくれれば良かったのにさあ』
カーチス≪ただねえ似てんですよ≫
『似てねえよ』
「お父様のうなぎ事件っていうのがあって」
山下『僕ら兄弟が小学生の頃にまだ食べ物が無い頃に親父が贅沢していたんですけど。兄弟が飯食ってる前でうなぎ食うんですよ。僕らは粟だのひえだの食ってるところに。欲しいじゃないですか。でもこういうのはなあ自分で稼いで食えっていうんですよ。だから僕は高校には進学せずにちょっとチョロチョロしてバンドボーイになって最初にもらった金でうなぎを食ったよ』
「おいしかったでしょ。でもお父様もねえ」
『でも正しいと思いますよ。今の成人式で元気な人たちを見ちゃうと大人になりきってないのに20になって残念だなと。やっぱり親を大事にして、先生を尊敬して、国を大事にして』
≪お前に言われたくないってのもあるけどねえ≫
『今政治の話をしている』
「平尾さんは作曲家をやったりミッキー・カーチスさんは俳優やって映画にも出たりしてるんだけど山下敬二郎さんは一貫してロカビリーを」
『こう売れて落ちたんですけど這い蹲った時代が10,20年あったんですけど売れなくなったからやめるっていうのはねえ。負け犬にはならないぞっていう。いつか俺に歌えといってくれといってくる日があるだろうと。となったらこうなっちゃたんで死ぬまでやりますけどねえ』
「実は明日」
≪明日だよ≫
『考えただけでもつかれる』
「明日有楽町の国際フォーラムである。なにがなんでも国際フォーラムなんですって」
≪なんかそうみたいですね。僕はどこでもいいですけど≫
「全国でおやりになる」
≪『そうです』≫