2002年3月15日
楚々(そそ):①あざやかなさま②清らかで美しいさま~小学館国語大辞典より~
黒柳「この前においでいただいたときは13年前でお嬢さんが生まれた時だったんですね。そのお嬢さんが13にお成りになってその間いろいろなこと(※:多岐川さんは離婚された)がありましてね、かつては”楚々(そそ)”としたイメージがあってね美しい女優さんだとそういうイメージの自分が引きずられていたという感じがあるんですって」
多岐川≪ぜひそこから自分で脱出しなければと歳と共になんでしょうけど。誤解されたままなんで勘違いしたままだと誰も訂正してくださらないんで、変えていこうと役なんかもこう違うもの違うものを選んだりして≫
「こう少し違うなって思ってたのが段々段々大きくなって」
≪ものすごく違ってきましたね≫
「今お一人でお嬢さんを育てているという風になればね変わってきますね。今はお嬢さんと2人で元気に」
≪元気すぎて子供がですけど≫
「そのお嬢さんがなかなか辛辣(しんらつ)」
※:多岐川さんの娘さんは13歳になる
≪子供が13歳ぐらいになってくると女親というものは強くなってくるものなんですけど男の子を持っているお母さんはみんな強いんですよみんな男言葉で怒って「なにやってんだ!!」って。言葉も性格も男言葉になっているんですけど私はいまだに家の中でボケてまして突っ込まれて突っ込まれて(※:娘さんから多岐川さんが突っ込まれる)≫
「13歳ぐらいの娘さんはすごくはっきりして辛辣で「ママすごく疲れているよ、歳相応の顔になっているよ」っていうんですって?」
≪しょうがないですよねその歳なんですから。面白いこというんですね「今日は多岐川裕美の顔だった、昨日は本名(※:女優ではない顔)の顔だった」って。お仕事から帰ってくるときはお化粧をおとしてすごく疲れた顔で帰ってくるんで本名の顔だったっていうんですね≫
「おもしろいわね子供って」
≪「ママ恋をしなくちゃ老けちゃうわよ」ていうんです。で”私は老けないように宣言します”って勝手に(娘が)書いちゃうんです。それを花とかが飾ってあるでしょそこに指しちゃうんです≫
「あなたが宣言しますって。それ(娘さんの)本心だと思いますよ」
≪裏腹なのか本当の思いなのかは分からないんですけど≫
「でも恋人を作って欲しいとかは言うの」
≪よく言いますね≫
「そうかといって探っているとかいうわけじゃないんでしょ?※:結婚したいと思っているかどうかを探ってるのかという質問」
≪そうではないんです≫
※:日本テレビで平日2:00から草野ひとしさん司会で放送されているワイドショー「THE WIDE」のこと
「私はわからないですけど草野さんのやってるワイドショーを見てたんですねそこでヘアメークをしてくれる2人がいて理由を書いて送ってもらえればどこにでも行きますっていう企画があったの。それで小学校5年生の男の子がお母さんはお化粧が雑で前に離婚していてお母さんと2人で暮らしている小学5年生の男の子が「お母さんがもっと綺麗になれば違うお父さんが来るかもしれないから」ってそれで綺麗にして欲しいというものだったの」
≪はあー≫
「でお母さんが綺麗になったらその男の子が「わあーお母さん生き生きしてるね」って言うの「新しいお父さん来るかもしれない」って本当に言うのね。街なんか一緒に歩いてお母さんの顔を見て「お母さんきれい」って言うの。私なんか泣いちゃって。だから本心なのかなっと思ってね」
≪そうなんですね新しいお父さんでもいいんですね(笑)≫
「子供ってこんなにお母さんのことを思ってるのかもしれないと思ってだからお嬢さんが”(多岐川裕美/お母さんが)恋人をつくります”って宣言を書くのも本心じゃないかと思う」
≪じゃあそう思いましょう(笑)≫
黒柳「お母さんはきれいでいて欲しいんじゃないですかね」
多岐川≪家に居る時の格好がひどいもんですから「なんて格好してんの」ってきつく言われます。外に行くときのものはいろいろ買うんですけど家の中できるものは無いんですね≫
「パジャマから即よそ行きで」
≪そうなんです。もっとおしゃれな普段着を買わなきゃなって思ってます娘のために≫
「お嬢さんはあなたの写真なんか見ると全部同じ笑いかたしてるとか言うんですって」
≪私が外でポラとかで撮って家に帰って今日こんな仕事したのよとか言って(娘に写真を)見せると私は良いじゃないと思って見せるんですけど「同じ笑顔」とかいってすごく冷たいんです(笑)構えてにっこりしたときの写真なんですけどでもそれ言われて勉強になりますよね。同じ笑顔でもドラマのようにこう変えていなきゃとか。前向きな意見ではありますね≫
「それとお嬢様の友達のお母様でとても威厳のある方で素敵なんでこのようにしようと(多岐川さんが)思いになって」
≪私は怒るのが下手なんですね怒りかたが下手と言うか親子の関係じゃなくて姉妹なんですね。いけないX2と思って友達のお母さんがとっても怒るのがうまいんですねで1日真似してたんですねするとすぐに言われましたね「変。何々さんみたい」って≫
「すぐにわかっちゃう」
≪でも言われてもやってたんですけどばれてからは(娘さんが)笑うんですけど似てたらしいんですけどママらしくないと。子供って言うのはすごく勘がいいなと。自分らしく怒らないとあまり効き目は無かったようです(笑)≫
「でもあなたがお弁当はつくてらっしゃらなかったしお仕事が忙しかったら「お弁当作ってもらえないんだ~」って誰かに(娘さんが)こぼしたのをお聞きになった?」
≪こぼしたんじゃなくてその時私がいろいろ問題を抱えてまして悩んでいたときに何か不満は無いって聞いたんですそしたら私には不満はないっていうんです。(不満が無いと言うのは)私に遠慮をする子供だったんです。それは私がお弁当を作ってないから≫
「「ママは仕事の方が大事みたい」って」
≪そう言われました。「仕事の方が大事なんでしょ」って言われてちょっとグサっときましてもっともっとがんばらないとと思いまして。5時におきて朝ごはんを作って出来ればお弁当も作って朝ごはんを食べるときに一緒にいてあげたいんですけどなれてないんで下手ですから食べている間にお弁当を作って段々慣れてきて(作る時間が最初に比べて)30分ぐらい縮まったんです≫
「でも冷凍食品のおかずが多いというのも見抜かれてるんですって?」
≪それははじめの頃なんですけどあまりきつい事を言うのでその通りなんですけどだからがんばって全部手作りで。1品ぐらいは冷凍食品でもいいんですけど≫
「でも娘さんが変わったっていうのは自分の方に母の愛情が向いたっていうのが分かるんでしょうね」
≪1ヶ月公演とかそういう時はパスするんですけどちゃんとやっております≫
黒柳「一方多岐川裕美さんというのは美しい女優さんという看板をしょってるような感じがあって」
多岐川≪そういうことはないんですけどキャラクターですよね”楚々(そそ)”とした。着物は好きですけどそういう風に寄ってしまうのでもうちょっと違う風にしたいな~と≫
「このごろは随分面白い役とかもやるようにしてるんでしょ」
≪そうですねそれが面白いですよね舞台なんかでは何でも出来てしまいますよね。私は元々楚々としてないのにかってにそういうレッテルが貼られてしまって本当におっちょこちょいで今日も忘れ物だらけででてきたんですねお財布も忘れてきたんですよ。だからマネージャーさんに2千円借りようかしらって。まだ借りてないですけど(笑)≫
「でも一方普通の主婦の方とお付き合いをしてそれがまたいいんですってねえ」
≪私の性格が変わってきたんですけど娘が小学校2年生のときからずっと付き合ってるんですけどですから6年目ぐらい≫
「お嬢さんのお友達のお母様方」
≪そうです。とってもいい方々なのでお付き合いしてみても相性が合わないと離れますよねでもこの先も一生続くであろうお友達で。私にとって一般の方々と会うってことが無いんですね≫
「こういうお仕事してるとね」
≪娘たちの話もしましたけど自分たちは自分たちで楽しんじゃおうよって。一日中子供の悩みとかを話してると嫌になっちゃいますよねそういう話をするときもあるんですけどそういう話はまったくなしでみんなワインが好きなんですね飲んでは楽しく≫
「これを着てってジャージの上下とかを渡されちゃうんですって」
≪別にたいした洋服を着てないから大丈夫だって言うのに置いてあるんですね。着替えちゃうとリラックスしちゃうから違うんですね≫
「まあね」
≪そういうワインパーティーが好きでお付き合いするようになってからはどこへでも行くようになったしお店に個室があろうとなかろうと私はそういうこと気にするんですけどカウンターだけのお店であろうが下北沢なんかを平気でブラブラしちゃうんですね≫
「若い頃から女優さんやってらしたから「ああ多岐川裕美!!」ってことになっちゃうからささっと通り過ぎるようになってた」
≪ガード精神がなくなってうれしいですね≫
黒柳「多岐川さんはのんびりせっかちというか今度お友達がお宅にいらっしゃるとじっと座ってるのもあれなんですって」
多岐川≪私はとっても気がつくんです(笑)自分でいうのもなんですが。ところがお料理が全部出て汚れたお皿なんかが出たら片付けたりしていちいち動いちゃうものですから落ち着かないんですって≫
「みんなが落ち着かないって。話が中断したりするからみんなが座っててていう感じなんですって」
≪私はいすに座ってポーとしてるように見えるんですけど全然座ってないんです≫
「えも多岐川さんがそういう方だと分かってみんな安心したんじゃないかしら。この頃は共演の女優さんとかと」
≪私ねえ好きな方って男の方でも女の方でも自分で行けないんです。何とも思ってなければいくらでも話できるんですけど。私ね浅丘ルリ子さんと舞台をやりまして大好きな女優さんなんですけどずずうしく別荘まで押しかけてしまったというこの私がこんなに変わったんだと≫
「多岐川ですと言えなかった」
≪”おはようございます”と”おつかれさまでした”しか言えなかったんです。それを止めてよかったなあって≫
「別荘までいらっしゃって(笑)」
≪押しかけて一泊までして楽しくお話して≫
「すごくお変わりになったんですね。」